シンドラーのリスト

発言に対する補足(その1)
FMOVIEで繰り広げられた『シンドラーのリスト』を巡る論争の一部。
パソコン通信のよさは論争が出来るところですね。by K. Hattori


 スピルバーグの『シンドラーのリスト』は、そんなにたいした映画じゃありません。だからそんなにムキになることもありません。僕はこの映画を見ても特に感動しませんでしたから、茜さんがネズミになってしまうという気持ちもわかりません。僕はこの映画に感動したという人を見ると、『チャーリー』に感動したという人を見たときと同じ不可解さを感じます。『シンドラーのリスト』にしろ『チャーリー』にしろ、最後に泣かされてしまった人はうまく一杯食わされただけだと思います。

 僕は『チャーリー』という映画についてクソミソに書いたことがありますし、『シンドラーのリスト』についても僕なりに感想を書いたつもりです。細かいところは繰り返しませんが、少なくともこのFMOVIEで『シンドラーのリスト』を映画として高く評価している人は皆無ではないかと思います。要は皆さんホロコーストという「事実」にショックを受け、そこに「現実に」現れたシンドラーという人物に感動しているだけでしょう。僕自身もシンドラーという人物の行動についてはいろいろと考えさせられましたが、それと映画を語ることは別だと思います。僕はシンドラーその人については感心しましたが、映画『シンドラーのリスト』には感心しませんでした。

 僕はこの映画を他人に勧めようとは思いません。つまらない映画ではないし、特にできの悪い映画でもないけれど、この映画を観るくらいなら(例えば)『愛が微笑むとき』をもう一度観た方が、はるかに豊かな気持ちになれます。何度も言うようですが、『シンドラーのリスト』なんて、そんなに大騒ぎするような映画じゃないですよ。

 あ。蛇足になりますが、ホロコーストについて書かれた本では、ミルトン・メルツァーの『ネヴァ・トゥー・フォアゲット』(新樹社刊/1,200円)が僕の教科書。迫害体験談としてはフランクルの『夜と霧』(みすず書房)も読んだけど、他人に勧めるならアート・スピーゲルマンのマンガ『マウス』(晶文社刊/1,900円)がイチオシ。もっともこのマンガ、日本語版はまだ物語がアウシュビッツまで到達していません。(晶文社は早く後半を出版してくれ!)ノーベル平和賞をとったユダヤ人作家エリ・ヴィーゼルの代表作『夜・夜明け・昼』(みすず書房刊/2,800円)も素晴らしいですよ。また、イスラエルとパレスチナの問題については、岩波新書から『パレスチナ』という本が出ています。これを読めばモダヤキ氏に『ユダヤ人の「選民思想」やパレスチナ問題について、どれだけ知られているのだろうか』などと言われずにすむでしょう。ユダヤ人やホロコーストについて考えるなら、映画『シンドラーのリスト』を観るよりはこうした本を読んだ方がはるかに面白いと思います。(そういえば僕、『アンネの日記』って読んでないなぁ。)

 『シンドラーのリスト』については、また改めて書きたいと思います。


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