守ってあげたい!

1999/12/06 松竹試写室
菅野美穂と宮村優子が女子自衛官になって地獄の特訓に挑む。
もっともっと面白くなるはずなのになぁ……。by K. Hattori


 思いつきで自衛官になってしまった主人公・安西サラサ(20歳独身)が、厳しい訓練の中で成長して行く様子を描いた異色の青春ドラマ。原作はくじらいいく子の同名コミック。主演は菅野美穂で、共演が杉山彩子、宮村優子、白川みなみ、鈴木沙理奈、古尾谷雅人など。防衛庁と自衛隊が完全協力して、普段はカメラの入らない隊舎や演習場での撮影が可能になったという。確かにこれで面白い映画になれば、自衛隊のPRにもなりますしね。実際には、あまり面白くなってないんだけど……。

 個性豊かで落ちこぼれ気味の新兵たちが、鬼教官にしごかれて一人前の兵士に成長して行くというストーリー展開は、過去に何度も繰り返し映画化されています。この映画はまさに、その定番ストーリーを日本の婦人自衛官に移し替えたものに他ならない。この映画に登場する女性自衛官たちは、誰ひとりとして「国土防衛」「日本を守るぞ!」なんて言わない。一般社会に適応できない連中が、「自衛隊にでも入るか……」と消極的な選択として自衛官になっただけなのです。2年務めれば退職金が貰え、大型車両の免許も取れるという甘言につられて入隊した主人公のサラサを始め、私服を重装備の軍服で過ごす軍事オタクの島馬京子、「うちの父が自衛官でね」が口癖のファザコン女・牛尾衛子、バブルで実家が破産した元お嬢様の桜吹雪鳥子、風呂に水着姿で現れるほど超オクテの亀田ひろみ、元レディースの鰐淵景子、女子プロレスラーくずれの大熊ゆかり……。どいつもこいつも、一般社会に適応できない落ちこぼればかり。

 映画の導入部は、緊迫した不発弾処理のエピソードから始まる。ここで「縁の下の力持ち」としての自衛隊をアピールしつつ、それを迷惑にしか感じていない主人公サラサの姿を対比させている。男に振られたサラサが、自衛隊に入るまでをコミカルに描くのも悪くない。ただ、その後があまりテンポがよくないのです。せっかく同じ班に個性的なメンバーをそろえたのに、それぞれの人柄が見えてくるエピソードが乏しくて、性格付けが単なる味付けだけで終わってしまっている。エピソードが主人公の所属する班の内部ですべて完結しているため、彼女たちが他の班に比べてどの程度できが悪いのか、映画を観ている側にはまったく実感できない。こうした部分では新兵訓練ものの定石通り、同期入隊のエリート部隊か何かを引き合いに出して、主人公たちのダメさを徹底的にみじめに描いてほしかった。その上で、主人公たちがそれぞれの弱点を克服して行く様子を見せてほしい。

 上映時間2時間弱は長すぎ。これっぽっちの話なら、1時間半で描けるはずです。映画のクライマックスは最後のコンパス行進訓練ですが、それだけで映画の半分を使っている。ここはもっと短く刈り込めるはずです。「訓練が実戦になる」というのがこの手の映画の定石ですが、この映画でも行軍訓練が途中から本物の災害救助になる。この映画最大の山場に差し掛かるのが開始から1時間半の時点。まだ30分ある。あ〜、長い!


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