極道の妻〈おんな〉たち
死んで貰います

1999/11/24 東映第1試写室
高島礼子主演の新『極道の妻〈おんな〉たち』シリーズ第2弾。
前作はダメだったが今回はなかなかの映画だ。by K. Hattori


 岩下志麻の姐さんぶりが好評だった『極道の妻〈おんな〉たち』シリーズが10作目でピリオドを打った後、高島礼子主演で今年春から始まった新シリーズに早くも2作目が登場。前作『極道の妻〈おんな〉たち/赤い殺意』はつまらない映画で、いかにも「ビデオ・セールスのためにシリーズを温存しました」という意図が見え見えの駄作だった。今回の映画もねらいはビデオ市場にあるのが明白で、劇場公開は形ばかりだし、来年1月には早くもビデオが発売される。しかしこの2作目、内容的には前作と比較にならないほど面白い。監督は前回と同じ関本郁夫だが、脚本は中島貞夫から高田宏治に替わっている。前作ではかたせ梨乃が出演して岩下時代の『極妻』との連続性を保っていたが、今回はそうしたつながりを断ち切って、高島礼子、斉藤慶子、東ちづるらが、女の意地と度胸でしのぎを削る。

 物語の舞台は京都。伝統ある関西のやくざ組織で、急死した総長の跡目を巡って争いが起こる。古くから総長の跡目と目されていた若頭の拝島は、長い懲役を食って刑務所暮らし。その留守を拝島の妻・久仁子が守っていたが、跡目を決める入れ札では若頭補佐の半沢が金で票を買い集め、跡目候補者の座を手に入れてしまう。拝島こそ組織の後継者と息巻く勢力と、若くて勢いのある半沢の肩を持つ勢力とに組織は分裂。だがこの分裂騒ぎに乗じて、秘かに組織の実権を握ろうとする男がいた……。

 高島礼子は正統な跡目相続人である拝島の妻を演じ、拝島派と対立する次期総長候補・半沢の妻を斉藤慶子が演じている。東ちづるは半沢の愛人という設定。男たちが勢力争いを演じている間、これらの女たちはその背後で男を支える存在でしかない。しかしこの映画は『極妻』なので、最終的には男たちの行動が頓挫し、女たちが表舞台に出てくることになる。観客は全員がそれを知っているし、期待して待ちかまえている。どこでどのような形で男たちを挫折させるのかが、このシリーズの見どころのひとつかもしれない。だが『極妻』シリーズでは物語の後半になると男たちが都合よくバタバタと挫折し、それまで日陰の身にあった女たちがここぞとばかりに活動を始める。これがあまりにもパターン化してしまうと、人間関係のバリエーションは作りにくくなる。この映画では、高島礼子扮する拝島の姐に夫の出所を待たせることで、彼女が我慢を重ねることに必然性を与えている。さらに、半沢をはさんだ斉藤慶子と東ちづるの三角関係や、東ちづるの高島礼子への屈折したライバル意識を盛り込んで、人間関係を複雑なものにしている。

 男たちが血と汗を流して築き上げた巨大組織は、血で血を洗う抗争に傷つきボロボロになってしまう。そして最後にその息の根を止めるのが、殴り込みに行く姐ふたりなのだ。自分の夫たちが守ろうとした組織を壊そうというのだから、その心持ちが悲壮なものになるのもやむを得まい。ストリングスを主体にした音楽が、むせび泣くように映画の全編を覆っている。


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