完全犯罪

1999/10/26 FOX試写室
監禁された女をどうやって助ける? そもそも事件の発端は?
先が読めずに二転三転するサスペンス映画。by K. Hattori


 苦い後味が残る映画です。内容はかなり緻密なミステリーなので、あまり詳しいことは書けないのですが……。監督はイギリス出身のマイク・バーカー。脚本のデッド・グリフィンは、この作品ともう1本で、いきなりふたつの脚本が映画化された新鋭テッド・グリフィン。出演は『カラー・オブ・ハート』『クルーエル・インテンションズ』のリース・ウィザースプーン。『フェイス/オフ』『アイ・ウォント・ユー』のアレッサンドロ・ニボラ。『ナイトウォッチ』でユアン・マクレガーの親友役を演じたジョシュ・ブローリン。2時間超が当たり前という映画が多い中、これを1時間33分でまとめたのは立派。最後のどんでん返しには、見事に一杯食わされました。しかもそのオチが、ただ観客に予想外の驚きを与えるだけでなく、ちゃんと映画のテーマと繋がっているところがすごい。この脚本家はただ者じゃないぞ。

 町のスクラップ工場で働きながら、いつかは町を出ようと思い詰めている青年ニック。ある晩、学生時代の友人ブライスとバーで酒を飲んで家に帰ったところ、さっき別れたばかりのブライスが興奮気味の声で電話をかけてくる。電話の声にせき立てられるようにブライスの住まいに出かけたところ、そこには手錠で縛り付けられた若い女いる。ブライスはバーで知り合った女を家に引っ張り込んで寝た後、女が突然「レイプで訴える」と言い出したことに驚いて、後先考えずに女を地下室に監禁してしまったのだ。大学教授として社会的信用も得ているブライスにとって、取り返しのつかない失態。本人は完全にパニック状態だ。ニックは彼を説得して、何とか女を解放させようとするのだが……。

 がんじがらめの状況を設定して、そこから主人公たちがいかに脱出するかを描いた映画です。ブライスに監禁された女をいかに脱出させるかという問題。ブライスの突飛な行動に巻き込まれてしまったニック本人の問題。じつはニックも他の場所で、にっちもさっちも行かない状況に追い込まれている。二重三重にからまりあった、死と隣り合わせの危機。ある危機から逃れるための行動が、さらに厄介な別の危機を引き起こすという悪夢の連鎖。すべてが解決したとき、観客の心の中には苦い後味が残ることでしょう。面白いんだけど、それだけでは終わることができない映画です。

 監禁された女を演じたリース・ウィザースプーンは、口の形が受け口だし、アゴの形もちょっとヘン、目つきもきつくて、いわゆる美人の系統ではない顔立ち。意志が強そうで、強情っぱりで、知性的にも見える。だからこそ『カラー・オブ・ハート』のオチが成り立つのだし、『クルーエル・インテンションズ』の役もあり得るのです。自分一人で生きていける強い女が、惚れた男のために誠心誠意つくすところがセクシーなのです。この映画では、そこがほんの少しだけマイナスにもなっている。彼女が聡明な女に見えすぎて、主人公の男と釣り合いがとれないように見えちゃうんだよね……。

(原題:BEST LAID PLANS)


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