金田一少年の事件簿2
殺戮のディープブルー

1999/09/15 丸の内東映
アニメ映画版「金田一少年の事件簿」の第2弾は沖縄が舞台。
トリックはともかく、人間の描き方が物足りない。by K. Hattori


 試写を観そびれたので、公開終了間際の劇場に駆け込みましたが、昼間からビールなんぞ飲んでいたせいで前半に少し寝てしまった。最近すっかりアルコールに弱くなってしまったなぁ。昔はビールやウイスキーを飲みながらガリガリ仕事をしていたのに……。後からパンフを買ってストーリーを読んだら、実質的にはあまり寝てしなかったようですけどね。殺人事件の経緯などはきちんと目を覚まして観てました。ホテルに閉じこめられてしまうくだりや、キングシーザーが登場するあたりで少し寝てしまったようです。本当なら寝てしまった部分を次の回に確認しておくべきかもしれませんが、この日は次の回がすぐ『鉄道員(ぽっぽや)』になって、続けて2回映画を観ることができなかったのは残念。

 物語の舞台が沖縄のリゾートホテルになっていること、謎の海底遺跡の登場、インターネットを使ってテロリストを集めるというアイデアなど、物語の出発点はなかなか面白いと思います。犯罪のトリックなども、まあまあのレベル。ただし、アイデアの肉付けがもう少し欲しかったし、サスペンスの盛り上げにも一考の余地がある。テロリスト・グループの描き方も、もう少し何とかならないんだろうか……。話の焦点が定まらないまま、モタモタとラストシーンに到達する印象があるなぁ。

 例えば爆発物の扱い。最初に藍沢家の次男が殺されるのも、その後にオーロラビジョンが爆発するのも、すべて爆発物を使ったテロです。こうした前例が伏線となって、犯人がホテルに爆発物を仕掛けたという話にサスペンスが生まれる……はずなんですが、じつは全然サスペンスになってない。爆弾テロを映画の中に登場させるには、爆発物に精通し、爆弾の破壊力に負けない個性を持ったテロリストを登場させるのが定石です。『ナイトホークス』のルトガー・ハウアー、『ブローン・アウェイ/復讐の序曲』のトミー・リー・ジョーンズ、『隣人は静かに笑う』のティム・ロビンスなどが好例でしょう。しかし『金田一少年の事件簿2/殺戮のディープブルー』には、そうした強烈な個性を持つテロリストが登場しないのです。爆弾は勝手に仕掛けられ、勝手に爆発する。これでは爆弾テロの恐ろしさはまったく感じられない。爆弾テロを扱った映画は無数に存在するのだから、そうした映画をもっと参考にして欲しかったぞ。

 テロの被害者となる藍沢家に、複雑な家族構成を設定した割には、家族間の葛藤がまったく描けていない。兄妹間の嫉妬や対抗意識、若い後妻の野心などが、密室の中でもっと浮き彫りになってもよかったかな。それにあまり比重を置くと別の映画になってしまいますが、この映画ではあまりにもサラリと流しすぎている。

 一番気になったのは、犯人の動機が不明瞭なこと。ハッカー少女の正体も、扱いがあまりにも中途半端すぎる。インターネットでテロリストを集めるというアイデアも、もう少しエピソードを重ねて欲しい。同じようなアイデアも『踊る大捜査線 THE MOVIE』の方がうまかったぞ。


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