風と共に去りぬ

1999/09/14 イマジカ第1試写室
世界の映画史に残る名作を最新技術で公開時の状態に復元。
DVDも発売中だがスクリーンで観るのは格別。by K. Hattori


 1939年に製作された『風と共に去りぬ』は、ハリウッドの歴史に残る超大作。戦前のハリウッドを代表する大物プロデューサー、デビッド・O・セルズニックが、持てるすべての力を注いだ代表作です。しかしこの映画は今や、アメリカ人が世界に誇るべき文化遺産のような物になっている。マーガレット・ミッチェルの原作もベストセラーですが、『風と共に去りぬ』を映画でのみ知っている人はその何十倍もいるでしょう。何を隠そう、僕もそのひとりですけどね……。

 今回の上映では、最新のデジタル技術を使ってフィルムの傷や汚れを徹底的に除去し、サウンド・トラックもデジタルに対応させた。さらに1970年代半ばから使われなくなったテクニカラーのダイ・トランスファー・システムを復活させ、60年前の観客が観ていたのと同じ色調を復活させている。(上映用プリントも同じ方式で作られたのかは不明。ダイ・トランスファーで作ったポジをマスターにして、インターネガを作っているのかもしれない。)過去の再上映ではビスタサイズやシネスコサイズで上映されることの多かった作品だが、今回はオリジナルの1:1.33スタンダード・サイズでの上映だ。奇妙なことに、映写する際はシネスコサイズのスクリーンに左右黒味が入る。最初にヘラルドのロゴと『風と共に去りぬ』の日本語タイトルがシネスコサイズで上映され、その後スクリーンの中央にシネスコサイズの窓ができるのだ。『風と共に去りぬ』が製作された当時、シネスコサイズでの上映などという手間のかかる方法を採ったはずはない。これは今回、サウンドトラックをデジタル対応にした結果だと思う。どうせならヘラルドのロゴや日本語タイトルもスタンダードサイズにして、左右の黒味は暗幕で隠してほしかった。

 このリストア・バージョンは既にワーナーからDVDが発売されているので、内容面での目新しさはあまりない。サウンドトラックが5.1チャンネルになったと言っても、もともとがモノラルなのだから劇的な変化など起こりようがないのだ。「映画はテレビで十分」と考えている人は、DVDでこの映画を楽しめばよい。僕はビデオやDVDだと集中して1本の映画を見られない性格なので、映画館で最初から最後まで通して上映してくれる方がありがたい。それにこの映画の場合、画面が大きいことによる感動というのが絶対にあると思う。アトランタ炎上のスペクタクルは言うに及ばず、映画の中に何度か登場するタラの大地をバックにした主人公の姿は、大画面で仰ぎ見てこそ感動的なようにも思うのだ。

 映画は過去にテレビ放送などで何度も見ているが、今回通して観たことで気づいたのは、この物語におけるメラニーという女性の重要性。この映画がメラニーの登場で始まり、メラニーの死で終わることがその証明でもある。彼女に比べれば、レット・バトラーなど脇役です。この映画はスカーレットとメラニーという対照的な女性の葛藤を描いたドラマなのです。

(原題:GONE WITH THE WIND)


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