Four Fresh! '99 + 2

1999/09/03 映画美学校試写室
映画学校の学生が作った4本+2本の短編映画。
もっと普通の映画を観たい! by K. Hattori


 試写会場として利用されることの多い映画美学校は、アテネ・フランセ文化センターとユーロスペースの共同プロジェクトとして一昨年スタートした映画学校。プロダクション機能を持つ教育期間として、現役の映画作家・技術スタッフを講師に招き、実践的な映画・映像作りを学べる場だという。その学生が作った映画が、9月にユーロスペースで公開される。初等科の学生が作った4本の映画と、高等科の学生が作った2本の映画。短いもので23分、長いもので42分の短編作品。全部合わせて3時間ほどの上映時間でした。

 作品はどれもそれなりの完成度で、狙ったところはきちんと表現されていると思います。ただしその「狙い所」が面白いかどうかは別問題。6本の作品のうち僕が面白いと思ったのは、痛がりの小学校教師が登場する『意外と死なない』だけ。謎のリズム社と笛吹4人組が登場する『よろこび』も、姉弟が子供時代に見た記憶をたどっていく『犬を撃つ』も、小さな家の中での奇妙な人間関係を描いた『集い』も、僕にはさっぱりわけがわからなかった。たぶん作り手には何らかの意図があるんでしょうが、それが映画の中から浮かび上がってこないように思える。『黒アゲハ教授』は少しウトウトしてしまったのでコメントできない。『薄羽の蝶』は芝居の組立やクライマックスの演出に難アリで、狙ったところに手が届いていないような気がした。

 30分の作品というのは、短いようで意外に長い。これだけ時間があれば、かなり込み入ったストーリーも作ることができる。人生の喜怒哀楽も十分に描けるし、壮大な時間の流れもたっぷりと描くことができる。30分あれば、どんな話でも作れるのです。僕が今回気になったのは、6本の作品の過半がファンタジーや不条理劇であったりすることだ。もちろんそうした作品があってもいいのだが、そればかりというのは困る。なぜ正攻法のドラマで勝負しないんだろうか。ベッタリと日常に足をつけた作品が、『意外と死なない』と『薄羽の蝶』の2本しかないのはなぜなのか。これは初等科と高等科の違いなのか? 初等科の作品はファンタジーや不条理劇でなければならないというルールがあるのだろうか?

 海外のドラマやミニシリーズなどは、30分や45分という時間の中で、きちんと起承転結のあるドラマを作っている。そうしたスタンダードなフォーマットを守った作品が、もっとたくさんあってもいいと思う。こうした考えは、映画製作を学ぶ現場では保守的すぎるんだろうか? 僕は今回上映された作品をそれぞれ優れたものだと認めつつも、全体の傾向には首を傾げてしまうのです。作り手の個性は確かに大切だけど、スタンダードな物語の枠内でもそれは発揮できるはずなんです。

 ここで観た6本の映画のほとんどは、作り手の個性の枠内で充足していて、それ以外の広がりがあまり感じられない。「この映画をもう少しふくらませば1時間半の劇場映画になるぞ」とは思えない作品が多かったです。


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