グッバイラバー

1999/08/09 ワーナー試写室
パトリシア・アークエット主演のミステリー・サスペンス映画。
テーマはセックスと保険金殺人だ。by K. Hattori


 パトリシア・アークエット主演のミステリー・サスペンス映画。広告会社の重役ベンは、弟の妻サンドラと不倫の仲。一時の情事の後はいつも別れようと思うのだが、激しい気性のサンドラはそれを許そうとしない。アル中の弟ジェイクは情緒不安定で、兄と妻との関係を知ったら何をしでかすかわからない。ベンは彼に好意を寄せている同僚のペギーをデートに誘い、サンドラとの関係を清算しようとする。サンドラとは正反対の性格のペギーに、ベンは安らぎを感じるのだ。だがサンドラはそんなベンを許さない。彼女は自分とベンとの関係を夫にばらしてしまう。逆上したジェイクは自殺をほのめかす電話をベンに入れる。ベンは大慌てでジェイクの部屋にやってきたのだが、そこには意外な事実が待っていた……。

 試写室に行くと必ずプレス資料をもらうのだが、今回もらった資料は版下をコピーしたいい加減なもので、文字が薄くて読みにくい。そんなわけでまったく予備知識なしに映画を観はじめたのだが、これが意外に楽しめました。監督は『キリング・フィールド』『ミッション』のローランド・ジョフィ。社会派の大作映画を撮っていた監督なのに、今回はまた安っぽい映画を撮らされたものだと同情していたら、これはなかなかいいじゃないか。何より配役がきちんとしていて、少しも安っぽくないのがいい。主演のアークエッとの他に、不倫相手のベンを演じているのがドン・ジョンソン、夫のジェイク役はダーモット・マルロニー、ベンに想いを寄せる同僚ペギーにメアリー=ルイーズ・パーカー、やばそうな殺し屋にヴィンセント・ギャロなど、そうそうたる顔ぶれ。女刑事役のエレン・テジェネレスも、アメリカでは主にテレビの世界で活躍している人気女優だ。

 最初は不倫を巡る人間ドラマかと思っていたら、これが途中から保険金殺人の話になった。う〜ん、金融業者の連続保険金殺人疑惑が取りざたされている今、なんともタイムリーな映画だ。金融業者の疑惑も入り組んでいてわかりにくいが、この映画の人間関係もわかりにくいぞ。誰が被害者で誰が加害者なのか、物語は二転三転、どんでん返しに次ぐどんでん返しで、一瞬も目が離せなくなってしまう。ひとつの殺人で流された血は、新たな血を呼ぶ。保険金総額800万ドルの大博奕に、男も女も血眼になる。最後に生き残って笑うのは誰か?

 この映画では場面と人物の対比、人物と人物の対比がダイナミック。教会という場所と不倫セックスの対比、希代の悪女と「サウンド・オブ・ミュージック」という対比、やり手の広告マンであるベンとアル中の弟ジェイクの対比など……。映画の中盤で刑事が登場してくると、そこからはユーモアと残酷さが全面に出てくる。死体解剖で飛び散る血しぶき、説教好きのモルモン教徒刑事、インドやチベットにかぶれている広告会社の重役、レズビアンの女刑事など、どれもユニークなものばかり。ストーリーを書けないのは残念だが、どんでん返しの多いミステリー映画が好きな人にはお勧めの映画です。

(原題:GOODBYE LOVER)


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