BLUE NOTE
ハート・オブ・モダン・ジャズ

1999/07/21 日本ヘラルド映画試写室
1939年創設の名門ジャズ・レーベル“ブルー・ノート”の歴史。
膨大なインタビューは見応えがある。by K. Hattori


 1939年に設立された名門ジャズ・レーベル“ブルー・ノート”の歴史を、映像と音楽と写真と関係者の証言で綴ったドイツ製作のドキュメンタリー映画。監督・脚本はジュリアン・ベネディクト。ブルー・ノートの設立者は、1930年代後半にアメリカに移住してきたドイツ出身のユダヤ人、アルフレッド・ライオンとフランシス・ウルフ。この映画はそんなドイツ系ユダヤ人たちのジャズに対する献身的な愛情を、ドイツ人の映画監督が追想した映画なのだ。

 僕もジャズを聴かないわけではないのですが、ブルー・ノート・レーベルはちょっと敷居が高いような気がしてあまり聴いていない。僕は黒人のジャズメンが演奏するバリバリのモダンジャズより、白人のジャズ・ミュージシャンの演奏を好むのです。なにしろアンドレ・プレビンがお気に入りのピアニストですから、これだけでわかる人には僕の趣味がわかってしまいそう。ちなみにこの映画にはそのプレビンのインタビューも収録されていますが、日本語字幕で肩書きを「指揮者」としたのはいただけない。プレビンはジャズ・ピアニストとしてデビューし、映画音楽の世界で名をなし、クラシックの世界で指揮者として活躍しながら作曲もこなし、最近になってジャズの世界に戻ってきた人。それをつかまえて「指揮者」の一語で済ますのは失礼です。

 この映画では、モダンジャズの歴史の中でブルー・ノートがはたしてきた役割、特にプロデューサーとしてアルフレッド・ライオンがはたしてきた役目が大きくクローズアップされている。自分は演奏をしないものの、ジャズを聴く耳だけは誰よりも優れていたライオン。彼がいたことで、ブルー・ノートのレコードに収録された演奏はどれも最高のものとなった。ニューヨーク中のライブハウスで最新のジャズを聴きまくり、常に自分の耳と感性で誰のどんな演奏を録音すればいいのか決めていたライオンには感服してしまう。彼はそれだけジャズを愛していたし、自分の感性に自信もあったのでしょう。僕も映画をたくさん観てどれが面白いかつまらないかを見極めようとしてますが、時には自分でも判断に自信のないことがあるし、理解できない映画に出くわして戸惑うことがある。でもライオンはジャズに対してそうしたところがない。彼はどんなに新しいものでも、どんどん自分の中に取り込んでしまうのです。これはすごいと思う。

 この映画はブルー・ノート・レーベルの歴史を駆け足で描いて行くが、テーマは創立者たちの友情であり、ジャズメンたちとの信頼関係であり、モダン・ジャズに対してヨーロッパ人たちがはたした役割だ。この映画でブルー・ノートに興味を持つ人は多いだろうが(例えば僕もそう)、この映画がブルー・ノートの入門編になるわけではない。インタビューが主なので、演奏が細切れになってしまうのだ。この映画を観ると、CDを買って全曲通しで演奏を聴きたくなるだろう。(そういう意味では、入門編と言えなくもないのかもしれないな……。)

(原題:BLUE NOTE / A STORY OF MODERN JAZZ)


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