ウォーターボーイ

1999/06/21 ブエナビスタ試写室
『ウェディング・シンガー』のアダム・サンドラー主演最新作。
ヒロインのファイルザ・バルクがかっこいい。by K. Hattori


 アメリカでは大人気なのに、日本ではまったく無名という人は結構いる。僕はそうした人を映画で知ることが多い。DJのハワード・スターンは『プライベート・パーツ』で知ったし、ジェニファー・アニストンは『私の愛情の対象』でお目にかかれたし、アダム・サンドラーとは『ウェディング・シンガー』で初体面。これらの映画、アメリカではすべて主演俳優の知名度で大ヒットしたんですが、日本じゃどれも今ひとつだった。日本にはアメリカの情報が湯水のように流れ込んでいると思われてますが、じつはまだまだなのね……。

 この『ウォーターボーイ』はアダム・サンドラーの最新作で、監督・脚本・主演・音楽監修まで前作『ウェディング・シンガー』と同じメンバー。ウォーターボーイというのは、フットボール試合中に選手に水を運ぶ給水係のこと。野球試合のボールボーイと同じで、普通は子供のアルバイトです。ところがこの映画の主人公ボビー・ブーシェは、給水係歴18年、31歳という大ベテラン。口下手で内気なボビーは、チームの選手たちから事あるごとにいじめられる存在ですが、ある日突然コーチからクビを言い渡されてしまう。給水係こそ自分の天職と考えるボビーは、別の弱小チームに自分を売り込むことに成功。ところがそこでも彼は選手たちにイジメられ、怒り心頭に発した彼は我を忘れて相手にダイビング・タックル。これが見事に決まって、ボビーはフットボールの才能を見いだされるのです。

 それまで無能な人物だと思われていた人が、思わぬ才能を発揮して大スターになる映画は多い。小学生が大リーグのエースになる『がんばれルーキー』や、同じく小学生が大リーグのオーナー監督になる『リトル・ビッグ・フィールド』もその系統。『ウォーターボーイ』の面白さは、子供が大スターになるのではなく、逆に体力的には峠を過ぎ、このまま平凡な一生を終えるかに思えた大人が、意外な才能を見いだされて大スターになる点にある。主人公の年齢を31歳に設定したのは、もちろんアダム・サンドラーの実年齢に近づける意味もあるのでしょうが、これで主人公が20代前半の若者だと、話が生々しくなりすぎてこの面白さは出なかったでしょう。主人公の引っ込み思案ぶり、極度のマザコン、幼児なみの知識、性的な未熟さなどは、すべて彼が「31歳」だからこそ「そんな馬鹿な!」と笑っていられる。これが二十歳そこそこだと、「ひょっとしたら、こんな人がいるかも……」と思っちゃうもんね。

 今回の映画でヒロインを演じているのは、先日『ザ・メイカー』で久しぶりにご尊顔を拝見したファイルザ・バルク。僕は『ガス・フード・ロジング』からずっと注目してますが、最近はどんどんすさんだ役が多くなってきました。今回も腕にタトゥーをしてフットボール選手にナイフを突き立てる、はすっぱな姉ちゃん役です。キャシー・ベイツ演じる母親とこのヒロインが、弱気な主人公と面白いコントラストになっている。

(原題:THE WATERBOY)


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