囁く廊下
〜女校怪談〜

1999/04/30 シネカノン試写室
韓国で大ヒットした学園ホラー映画だが恐怖度はイマイチ。
ホラー映画と言うより管理教育批判映画? by K. Hattori


 昨年韓国で公開され、大ヒットした学園ホラー映画。アメリカでは『スクリーム』や『ラスト・サマー』などがシリーズ化され、日本でも『学校の怪談』や『リング』がシリーズ化されるなど、洋の東西を問わないホラーブーム。『囁く廊下/女校怪談』もそんな流れの中で生まれた作品だと思うが、韓国で大ヒットしたと言う割には、あまり面白くなかった。そもそもこの映画、あまり恐くないのだ。型どおりの「恐い場面」はあるのだが、観客の予想を上回るショッカー演出は存在しない。後ろからそっと近づいて「ワッ!」と声をかけるから相手は驚くのに、この映画はドタバタと相手に気取られるような近づき方をして、しかも「お〜い」と呼びかけているようなものです。本気で観客を怖がらせるなら、もう少し別のやり方があるんじゃないだろうか。パク・キヒョン監督はこれが長編映画デビュー作だそうですが、古今東西の恐怖映画を片っ端から研究してからこの映画を作れば、もう少し面白くなったと思う。中田秀夫監督の『リング』が面白いのは、作り手がきちんとホラー映画の定石を研究しているからなのです。

 この映画では恐怖描写そのものより、韓国の高校の様子が細かく描かれているのが面白かった。映画用に多少の脚色はあるのでしょうが、韓国の学校は徹底した管理教育なのですね。感心したのは、教師が授業をしている間は生徒同士の私語がほとんどないこと。私生活にまで介入してくる教師や、セクハラ教師は困りものですが、そんな教師でも生徒からは型どおりの敬意を払われている。学校の中で、教師と生徒の上下関係が厳格に決まってるようです。学級崩壊で頭を悩ませている先生がこの映画を観ると、「どうせ先生をするなら韓国でしたい!」と思うかもしれません。教師が女子生徒に向かって、棒でたたいたり平手打ちにしたり、平然と体罰をふるうのも驚いた。それが映画の中で、まったく問題視されていないのには、さらに驚きました。

 物語が学校の中だけで進行していくのは構わないのですが、学校の外にある家庭や社会がほとんど話題にされないのはどうしてだろうか。学校という場所の閉鎖性や特殊性を描くには、学校とその他の場所を相対化した方がいいと思う。また学校で事件を起こす幽霊が、9年間も学校に留まり続けていたという部分も、学校の中と学校の外がどう違うのかを描かないと説得力がない。なぜ幽霊は家族や親族のいる場所ではなく、学校という場所にやってくるのか。幽霊にとって、学校は楽しい場所ではなかったはずなのに。教師が殺される理由も説明不足。9年間という数字に、何か意味があるんだろうか。

 学校が楽しかろうが楽しくなかろうが、高校生は学校の中だけで過ごしているわけではない。生徒たちを取り巻く人間関係は、教師やクラスメートだけで構成されているわけではない。それは日本も韓国も同じはず。そうした多様性をきちんと描いた上で、そこから遮断された学校という特殊な場所を描いてほしかったと思う。

(英題:Whispering Corridors)


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