ビッグ・ショー!
ハワイに唄えば

1999/04/26 シネカノン試写室
『のど自慢』の売れない演歌歌手・赤城麗子のハワイ珍道中。
まったく面白くなくて、全然笑えない。by K. Hattori


 お正月に公開された傑作コメディ映画『のど自慢』の主人公、売れない演歌歌手・赤城麗子を主人公にした続編映画。『のど自慢』は期待されたほどにはヒットしなかったので、この続編は興行的にかなり苦戦すると思われる。『のど自慢』は試写の段階から前評判の非常に高い映画で、この映画がコケるなんて映画関係者は誰も思っていなかった。だからこそ、主人公のひとり赤城麗子を主人公にして『のど自慢』のその後を描いた映画を作り、邦画の番線にかける話も出たのでしょう。ところが興行というものはわからない。ふたを開けてみたら、『のど自慢』は思ったほど人が入らなかった。それでもブロックブッキングの宿命で、続編の公開は既に決まっていたというわけ……。今回の映画は続編と言っても『のど自慢2』ではなく、あくまでも赤城麗子の「その後」を描いた番外編的なストーリー。『のど自慢』については同じコンセプトで『のど自慢2』を作るという話もありましたが、シリーズが2作不入りでは、それも企画倒れに終わってしまいそうです。

 シリーズ映画には、続編の方が1作目より客を集めるということがしばしばあります。『ビッグ・ショー!/ハワイに唄えば』も、内容が面白ければ十分そうした路線を狙えたでしょう。でも、残念なことにこの映画はあまり面白くないのです。『のど自慢』の中でももっとも目立ったキャラクター、赤城麗子とマネージャーの須貝をハワイ巡業に送り出し、そこで出会った珍騒動や、実在の大物歌手のゲスト出演などをからめるという企画そのものは、そんなに悪いものではないと思う。でもこれって、企画のノリが昭和30年代のSP作品なんだよね。メイン作品が別にあり、それに添えられる併映作品として1時間程度にまとめられたなら、『ビッグ・ショー!/ハワイに唄えば』も悪くない映画でしょう。でもこの程度のアイデアで、1時間45分の長丁場はきつい。

 たぶん脚本作りに時間がかけられなかったせいだと思いますが、この映画は上映時間の中にひたすら大小の事件を放り込み、エピソードを数珠つなぎにすることで成り立っています。ドラマとしての伏線など、ほとんどなし。登場人物たちの心理描写もおざなりだし、ゲスト出演の都はるみはまったくドラマに参加することなく、正統派のゲスト出演者として添え物扱いされている。

 『のど自慢』では「こんな人っているよな」「こんなことってあるよね」という観客の共感が、笑いや感動を生み出す原動力になっていた。赤城麗子の周辺にいる怪しげなプロモーターなども、奇妙な存在感があって面白かった。だが今回の映画に登場するのは、奇妙奇天烈な奇人変人ばかり。『岸和田少年愚連隊』を観ればわかるとおり、井筒監督は奇人変人オンパレード映画が得意な人なんですが、今回は登場人物たちの行動が最後までかみあわず、現実離れした滑稽さだけで終わってしまった。赤城麗子の歌も、とてもプロの歌手とは思えないお粗末ぶり。もっと準備に時間がとれればね……。


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