ガンドレス

1999/03/28 丸の内シャンゼリゼ
映画が未完成のまま劇場公開してしまった、今年一番の話題作。
なぜ公開日直前まで誰も気づかなかったの? by K. Hattori


 公開直前の17日に試写を観に行ったら、「じつはまだ完成していません。公開日には完成するはずです」と宣伝担当者に説明されて、プレス資料の他に劇場パンフと劇場入場券をもらって帰ってきたのですが、公開日当日になっても、やはり完成しないことが公開直前に判明。報道によれば、配給を担当した東映関係者も18日の関係者向け試写までこれを知らされなかったそうで、日本映画興行史に残る一大スキャンダルになってしまいました。東映では上映を中断するよりは公開した方がマシと判断し、希望者には前売り券の料金を払い戻すことと、入場者には後日完成したビデオを送付することで切り抜けようとしたようですが、これはやはり事件です。東映は3週間の興行予定を2週間に縮め、次の番組との間に1週間だけ『沈黙の陰謀』を上映するようです。(これは丸の内シャンゼリゼの場合です。他の劇場では、別の番組がかかる可能性もあります。)

 今回実際に映画を観てわかったことですが、これは製作中にどうしても時間が足りなくなったというようなレベルではありません。東映側は「上映期間の3週間のうちに、1日でも完成版を上映できるようにしたい」と弁明していたようですが、現時点でこんな状態では、それもまったく不可能でしょう。報道では「全1400カットのうち約100カットが色付けが不十分な線画で、セリフと効果音にもズレがある状態」と説明されていましたが、僕の観たところ映画の過半が未完成のまま、とりあえず撮影だけしてストーリーをつなげてある状態です。作画のレベルにもバラつきがあり、人物のデッサンが歪んでいたり、動作そのものがいびつなカットもあります。

 僕はアニメの製作過程がどうなっているのかをよく知りませんが、これは3月20日公開の予定が完成にあと一歩及ばなかったというレベルではなく、数ヶ月単位での作業遅れだと思います。原画レベルでの作業も全部終わっていないようですし、動画がまったく手つかずでコマ落としのような絵になっている部分もあります。爆発や火器の発砲シーン、コンピュータ画面など、最近のアニメなら必ず透過光を使って処理しそうな部分も、手が着けられていない部分が多いのです。おそらく製作している側は、どんなに遅くとも3月に入った段階では、この映画が公開日までに完成しないことを知っていたはずです。にもかかわらず、配給への連絡が公開の2日前とは信じられません。これは監督の谷田部勝義さんが悪いのでしょうか。それともプロデューサーの藤家和正さんに責任があるのでしょうか。本人たちの釈明が聞きたいものです。

 ビデオ発売は8月だそうですから、それまでには完成するんでしょうが、それにしてもお粗末。たぶん幾つかのマスコミで、この件を取材していることでしょう。製作側の内部で何が起こっていたのか、興味は尽きません。話が一部つながっていない部分がある状態なので、現時点で物語や脚本についての論評は避けておきたい。何にせよ、非常に珍しいものを観させてもらいました。


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