グッドナイト・ムーン

1999/02/05 丸の内ピカデリー1
ジュリア・ロバーツとスーザン・サランドン主演の難病ドラマ。
脚本の構成に難があって泣けない。by K. Hattori


 女性カメラマンのイザベルは、バツイチでふたりの子持ちの弁護士ルークと同棲中。子供たちは週の半分を母親の家で過ごし、残り半分を父親の家で過ごすのだが、仕事で出張の多いルークのかわりに、イザベルが子供たちの世話をすることが多い。7歳のベンはイザベルになついているのが、やんちゃ坊主でイタズラ盛り。12歳のアンナは両親の復縁を願い、その障害となるイザベルを目の敵にしている。ルークの前妻ジャッキーは、ふたりの母親としては理想の女性。自分の子供が若いイザベルの不手際でケガや病気でもするんじゃないかとヒヤヒヤし、子供たちと仲良しになろうと努力しているイザベルには強い不信感を持っている様子。ところがある日、ジャッキーは病院の検査で自分がガンであることを知る。

 ジュリア・ロバーツがイザベルを演じ、スーザン・サランドンがジャッキーを演じ、エド・ハリスがルークを演じ、クリス・コロンバスが監督したヒューマン・ドラマ。離婚の多いアメリカでは子持ちで再婚する人も多いだろうし、子連れの相手と結婚して苦労する人も多いだろう。日本でも最近は離婚や再婚が珍しくないので、誰にとっても身近な素材といえる物語だ。それぞれひとりでも主役を張れる女優の共演ということもあり、濃厚なドラマ展開を期待したのだが、僕の印象としては期待はずれだった。僕も子供がいるから、本来は身につまされる物語になるはずなんだけど、残念ながら、これじゃ僕は泣けません。この映画は、物語の構成に少し問題があるんじゃないだろうか。本来ならもっと面白く、感動的になる話だと思うんだけどな……。

 物語の導入部がそもそもダメ。すべての前提となる人物配置の紹介に手間取りすぎで、観ていてすんなりと物語に入っていけません。ルークとジャッキーはいつ、どのようにして別れたのか。ルークとジャッキーの今現在の気持ちはどうなのか。アンナが願う両親復縁の可能性は、はたしてあるのかないのか。イザベルとルークはどのようにして出会い、どんなきっかけで同棲を始めたのか。ルークと別れたあと、ジャッキーの生活はどうなっているのか。ルークはイザベルに夢中だけど、ジャッキーはルークに未練はないのか。これらが映画の途中まで、場合によっては最後までまったくわからない。

 僕が一番解せなかったのは、ルークとジャッキーがなぜ別れたのかという部分。この映画では、ルークが子供たちに「パパとママは今でも一番の親友だ」と言いますし、ジャッキーの病気がわかった時、一番身近にいて親身になるのはルークです。僕はこれを見て「この夫婦は、なぜ別れる必要があったんだろうか?」と、強く強く疑問に思ってしまった。夫婦間の愛憎のドロドロとした部分が、この映画からはスッポリと抜け落ちている。影のない明朗なホームドラマを作り続けていたクリス・コロンバスに、夫婦の機微を描くことを期待するのが無理なのだろうか。でもこの映画って、それを描くことなしには、絶対に成り立たないと思うんだけどな。

(原題:STEPMOM)


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