ワイルドシングス

1998/12/14 SPE試写室
1件のレイプ事件から始まる二重三重のトリックとミステリー。
すごくエッチな雰囲気に満ちた映画です。by K. Hattori


 親身な指導で生徒たちからも人気がある高校のカウンセラー、サム・ロンバートが、彼にあこがれる女子生徒ケリーにレイプ犯として告発された。このスキャンダルは瞬く間に地域中に広まり、サムは職を失い、勝てる見込みのない裁判に引きずり出される。同じ学校に通うスージーが、やはりサムにレイプされたと証言したことで、サムは絶体絶命の窮地に立たされるのだが……。

 若くてハンサムな教師にあこがれた女子生徒が、教師に振られた逆恨みで彼をレイプ魔として告発したのか? それとも、女子生徒との接触に細心の注意を払っているかに見えた教師が、じつは凶暴な別の顔を持っているのか? まずはこの出だしだけで、ミステリーとしての面白さが十分に楽しめる。ところがこの映画のすごさは、この法廷劇が、物語のつかみに過ぎないことだ。映画の最初の30分ほどで、この裁判劇には簡単に決着が付いてしまう。もちろん話はこれだけでは終わらず、さらに血生臭い事件へと発展して行くのだ。この映画は二転三転する物語の進行そのものが面白いので、この後の物語についてはあまり書けないのが辛いところ……。

 映画は序盤でしっかりと登場人物たちの配置や性格付けを紹介して、中盤以降ぐんぐん物語のピッチを上げてくる。僕は序盤から中盤にかけては大いに気に入っているのだが、終盤はどんでん返しに継ぐどんでん返しで、物語の進行を急ぎすぎている印象を受けた。謎解きミステリーは、ひとつの謎が解けたことで次の謎が生まれ、それが解決してまた次の謎が生まれる……、という段取りを、ひとつひとつ踏んでいかないと観客が取り残されてしまう。この映画の終盤は、そこを勢いだけでグイグイ押してしまい、観客を置いてけぼりにしている気がする。もっとも、この映画の終盤にある二重三重のどんでん返しは、あまり丁寧に描くとしつこすぎると判断したのかもしれない。だとすれば、ここを素早く処理したのはねらい通りなんでしょうが……。でも、もう少しゆったりでもいいと思うんだけどね。

 この映画では、登場する女子高生にセックスの対象としての魅力を感じさせないと、観客が物語に入り込みにくくなる。その点で、この映画は十分すぎるほどの説得力があるはずだ。10代の少女たちの「若さ」だけが持つエロチシズムが、この映画にはたっぷりと描かれている。ここで問われるのは、彼女たちの顔かたちや性格ではない。もっと言えば、スタイルですらない。成熟した女でも、未成熟な少女でもない肉体の生々しさが、この映画ほど全面に押し出された映画も珍しい。特にケリー役のデニース・リチャーズは、全身からエロチックなオーラが漂っている。擬音で表現すると、ムチムチでフワフワでスベスベだ! これに匹敵するのは、『ホット・スポット』のジェニファー・コネリーぐらいかな……。この色気があって初めて、映画序盤の裁判シーンがハラハラドキドキのミステリーになるのです。(デニース・リチャーズ本人は20代半ばなんですけどね。)

(原題:Wild Things)


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