ユー・ガット・メール

1998/12/10 パンテオン(試写会)
『めぐり逢えたら』の監督・脚本・主演チームが描くインターネット恋愛。
中身は普通のロマコメとして水準以上のでき。by K. Hattori


 インターネットのチャットルームで出会った男女が、互いの素性を知らないままメール交換を続けるうちに、相手に特別な感情を抱くようになる。ところがこのふたり、私生活では仕事上のライバル同士。「NY152」ことジョー・フォックスは、大手ディスカウント・ブック・チェーン“フォックス・ブックス”の重役。「ショップガール」ことキャスリーン・ケリーは、児童書専門の小さな本屋“街角の店”の女性オーナー。パーティーで顔を合わせたふたりは、お互いが自分のメールフレンドだと知らないままに口論を始め、家に帰ってはその結果をメールで相手に報告する。互いに「がんばれ!」と励まし合い、すっかり意気投合したふたりは、オフラインでも実際に会おうと約束するのだが……。

 オンラインで知り合った男女が恋に落ちる、米国版『(ハル)』みたいな物語。『(ハル)』はニフティを使ったパソコン通信だったけど、『ユー・ガット・メール』はAOLを使ったインターネットに進化している。利用しているサービスはメールとチャットだけなので、パソ通でも通用する話ですが……。ちなみに使っているのはふたりともノートパソコンで、トム・ハンクスはIBM、メグ・ライアンはアップルでした。「Windows=官僚的・企業的」「Apple=家庭的・小規模店舗」ということなんだろうか?

 監督・脚本はノーラ・エフロンで、主演はトム・ハンクスとメグ・ライアン。これは『めぐり逢えたら』のチームが再結成した映画です。『(ハル)』は「パソ通を始めれば素敵な恋人ができるかも……」という幻想を持たせるに十分な作品だったけど、『ユー・ガット・メール』はどうだろう。この映画は普通のロマコメで、インターネットやメールは現代風の味付けに使われているだけ。その分、パソコンにまった無縁の人でも、よくわかる映画になっていると思います。「インターネットならでは!」という場面は、あまりないようです。

 映画の冒頭で、恋人を部屋から送り出した後、パソコンでメールを確認するキャスリーンのうきうきした様子がかわいい。これはジョーも同じ。この導入部から、ふたりが“街角の店”で出会い、パーティーで再会するまでが導入部。オンライン上の親友同士と、現実の宿敵同士のギャップを募らせて行く中間部は最高に面白いが、ジョーがショップガールの正体を知ったことで急展開。キャスリーンが店をたたもうと決意したところから、物語は終盤に入る。僕は中間部まではほぼ文句なく楽しめましたが、終盤の展開はちょっと気になるぞ。

 スーパーのレジでの対応を見ればわかるとおり、ジョーはすごく口がうまくて相手をその気にさせてしまう才能の持ち主です。その彼が「ショップガール=キャスリーン」ということに気づいて、彼女を口説こうと決意する。心の友「NY152」と好敵手ジョー・フォックスの顔を使い分けて、前後左右から彼女に揺さぶりをかけるのだから、これははっきり言って「ずるい!」と思う。ジョーの好意を疑うわけではないけれど、彼の行動にはどこか誠実ではない部分があるように思えて仕方がない。これじゃキャスリーンがバカみたいじゃないか?

(原題:You've Got Mail)


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