ラッシュアワー

1998/11/17 GAGA試写室
ジャッキー・チェンとクリス・タッカーが共演した刑事アクション映画。
意外な顔合わせに見えるが映画のできはいい。by K. Hattori


 ジャッキー・チェンの最新作であると同時に、『フィフス・エレメント』のオカマDJ役で大ブレイクし、初主演作『ランナウェイ』でも快調な芝居を見せていたクリス・タッカーの最新作でもある軽快なアクション映画。監督は『ランナウェイ』でもタッカーと組んだブレット・ラトナー。本作はアメリカで、公開第1週目にボックス・オフィスの第1位にランキングされる大ヒット作となった。なおオープニング・タイトルのトップには、ジャッキー・チェンの名前がクレジットされている。売れっ子のクリス・タッカーは「助演」なのだ。

 ジャッキー・チェンの作品は、ニューヨークでロケされた『レッド・ブロンクス』、オーストラリアでロケした『ナイス・ガイ』など既に数本がアメリカでも公開されてヒットしているが、どれも香港時代の製作スタッフを引き連れた「海外ロケした英語作品」という域を出ていなかったと思う。アクション・シーンで特にそれは顕著。ジャッキーの香港アクションと、ハリウッド流のスタントとの馴染みが悪かったのだ。ところが今回の『ラッシュ・アワー』では、香港流のアクションとハリウッドの華麗なスタント技術が見事に一体化している。ジャッキー流の生身のアクションが、合成などの特撮技術でスケールアップされ、香港映画では考えられないような大規模スペクタクルに進化しているのだ。それだけでも、この映画は観る価値があると思う。香港映画のスターがハリウッドで映画を作ると、アクション・シーンの監督に香港のスタッフを連れてくることが多いのだが、今回の映画では、アクション・コーディネーターとしてハリウッドからテリー・レオナルドが参加している。

 物語は単純だ。中国領事の娘が誘拐され、多額の身代金が要求される事件が起きる。領事は中国から友人でもあるリー刑事を呼んで捜査に協力させようとするが、FBIは外交的な配慮から彼を捜査に加わらせようとしない。FBIはロス市警のカーター刑事をリー刑事の案内係として呼び出し、市内観光でお茶をにごそうとする。だがその手に乗るふたりではなかった。リー刑事は領事との友情のために、カーター刑事は自分のプライドのために、FBIとは別ルートで誘拐事件の捜査を開始する。

 国籍も違えば性格も違うふたりの刑事が、反発し、牽制しあいながら、最後はチームワークで事件を解決するという定番のストーリー。ジャッキーは神業のようなアクションが持ち味だが英語は苦手、タッカーはよく動く口と表情で笑わせるがアクションは得意ではない。ふたりがそれぞれの利点を持ち寄って、絶妙のチームを作るという脚本はよく考えられている。どの場面でも、ジャッキーやタッカーがひとりだけ突出してしまうところがない。両者のバランスを取るには苦心しただろうが、それを感じさせない伸びやかさとスピード感で、映画を最後まで見せてしまう。これはジャッキーとタッカーの両者にとって、代表作のひとつとなることでしょう。久しぶりに感心したプログラム・ピクチャーでした。

(原題:Rush Hour)


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