ワンス・アポン・ア・タイム・イン
・チャイナ&アメリカ
天地風雲

1998/10/14 日本ヘラルド映画試写室
ジェット・リーが主演復帰した人気シリーズ第6弾は西部劇。
子弟のカンフー対決はすごい迫力。by K. Hattori


 『リーサル・ウェポン4』の悪役でハリウッド・デビューをはたしたジェット・リー(リー・リンチェイ)が、当たり役であるウォン・フェイフォン役に復帰したシリーズ第6弾。このシリーズは今までに『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明』『同/天地大乱』『同/天地争覇』『同/天地撃攘』他1本の計5作が作られているが、最初の3作に主演したリーが、4作目以降降板している。今回の作品でリーが復帰したことは、ファンにとって何より嬉しいことだろう。このシリーズは2作目の『天地大乱』だけが劇場公開され、他の4本はビデオのみリリースだったはず。リーの華麗なアクションが、劇場で観られるのも嬉しいことだ。僕はこの映画の予告編を以前観て、「すごいぞ、観たいぞ!」とずっと思っていたので、今回の公開は嬉しいかぎり。

 タイトルは『チャイナ&アメリカ』になっているものの、舞台は開拓時代のアメリカ西部。アメリカに入植した旧知の医師ソウを訪ねるためアメリカに渡ったフェイフォン一行が、凶暴なインディアンの襲撃にあったり、無実の罪で縛り首になりかけたり、銀行強盗一味を撃退したりと大活躍。カンフー映画ではタブーだった「敵が銃を持っている」という設定も入れて、全編がアクションに次ぐアクション。最後がガンマンとの戦いになるため、カンフー対カンフーの戦いは中盤の弟子との組み手で十分に見せるなど、アイデアとサービス精神にあふれた作品になっている。監督とアクション監督を兼ねるのは、『ナイス・ガイ』でハリウッド進出をはたしているサモ・ハン・キンポー。例によってありとあらゆる小道具を武器にして、主人公のフェイフォンが戦います。

 ハリウッド進出作『リーサル・ウェポン4』では、カメラアングルや編集で、ジェット・リー本来のアクションは半分以下に薄められてしまった。全身がカメラに写るフルショットでリーが戦えば、メル・ギブソンやダニー・グローバーなど歯が立たないのが明らかだからです。でも今回の映画では、無数に群がるインディアンや、無法者の拳銃を相手に、ジェット・リーの華麗な足さばきが存分に観られる。記憶喪失の師匠に過去を思い出してもらうため、弟子のアチーがフェイフォンに戦いを挑むシーンでは、『ブレード/刀』で悪役を演じたシャン・シンシンが、ジェット・リーと互角の勝負をして観応えがあります。カンフーアクションとしては、この子弟対決が全体のクライマックスでしょう。

 異色のカンフー映画としては十分に見応えのある娯楽大作ですが、西部劇としてはイマイチかな。もちろん、岡本喜八監督の『EAST MEETS WEST』よりは面白いんですが……。まず音楽が相変わらずシンセサイザーの安っぽい音で、ロケした風景に比べると薄っぺらすぎる。せめてテーマ曲ぐらいは、フルオーケストラで録音してほしかった。騎馬や駅馬車、最後に強盗団が町に入ってくる場面なども、西部劇テイストに欠けると思います。これなら、黒澤の『用心棒』の方が西部劇風です。

(原題:黄飛鴻之西域雄獅/ONCE UPON A TIME IN CHINA & AMERICA)


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