ハミルトン

1998/09/25 日本シネアーツ試写室
ピーター・ストーメアが主演したスウェーデン製のアクション映画。
ビデオをそのまま上映するのは恥ずかしいぞ。by K. Hattori


 北欧の中立国スウェーデンの特殊部隊隊長カール・ハミルトンが、ロシアから盗み出された核弾頭を追って大活躍するアクション映画。製作国はスウェーデン。監督のハラルド・ツァートはノルウェー人。主人公ハミルトンを演じるのは、コーエン兄弟の『ファーゴ』で無口な殺し屋を演じたピーター・ストーメア。その恋人テシーを演じているのは、『蜘蛛女』で女殺し屋を演じたレナ・オリン。核弾頭密輸の黒幕を演じるのは、『スター・ウォーズ』のルーク役以降はさっぱり役に恵まれず、最近ではCD-ROMゲームの登場人物にまで落ちぶれたマーク・ハミル。ストーメアとオリンはアメリカ映画しか観ない日本の映画ファンにもお馴染みの顔だが、もともとはスウェーデンで舞台や映画の俳優として活躍していた人たちだという。今回は製作者たちのたっての願いで、故郷に錦を飾るかたちとなった。

 主人公ハミルトンは、スウェーデンの作家ジャン・ギローが創作したキャラクターで、彼の国では今までにテレビ映画やミニ・シリーズの形で映像化されたことがある。ただし、映画化は初めてだとか。この映画は本国スウェーデンで『ビーン』や『エア・フォース・ワン』を凌ぐ大ヒットだったとか。スウェーデンを中心に、アメリカ、ロシア、リビアなどが舞台になる、スケールの大きな作品。もともとは全体の50%が英語、残りがスウェーデン語とロシア語という映画だったそうだが、今回日本で公開される国際版は英語による吹き替え。台詞と口の動きが合わないのが気になるし、意味の通じない場面まで出てきてしまった。主人公たちがロシアに行った場面で、車の中でハミルトンとロシア軍将校が親しげに話し、刑事だけが話が通じなくてチンプンカンプンという顔をしている。これはもともと、ハミルトンたちがロシア語で会話している場面だったのではあるまいか。

 スウェーデン映画は日本でほとんど公開されないので事情は知らないが、主演俳優をハリウッドから呼び戻し、これだけのアクション映画を撮るには、かなりの製作費が必要になったはず。物語のテンポもハリウッドのアクション映画に負けていないし、周辺を大国に囲まれたスウェーデンの軍事的立場も描かれている面白い作品だと思う。この映画を観ると、世界のパワーゲームの中で、軍事力がいかなる効果を持つのかがうっすらと見えてくる。自国の利益を守り、周辺国に膝を屈することなく「中立」を守るスウェーデンは、すごく「大人」の国だと思った。これに比べると、アメリカはナリこそでかいものの、精神構造が基本的には島国なんだよね。

 BOX東中野でレイト公開される映画ですが、今回はビデオでの上映。しかも市販のビデオと同じ、ビスタサイズを左右トリミングしたスタンダードサイズ。これにはビックリしました。配給元のクロックワークスは、上映用のプリントを輸入していないのです。ビデオ発売前に形ばかりの劇場公開をする映画はたくさんありますが、ここまでやるのは反則だと思うけどなぁ……。

(原題:COMMANDER HAMILTON)


ホームページ
ホームページへ