がんばっていきまっしょい

1998/09/16 東映第1試写室
観るのは2度目ながら、前回と同じかそれ以上の感動。
劇場にも観に行ってしまいそう……。by K. Hattori


 映画の舞台になっている松山では9月12日から公開され、東京は10月10日、大阪は10月下旬、福岡が11月の公開になるらしい。松山では好成績のスタートだそうだが、これは地元が舞台の御当地映画だからある程度は予想がつく。問題は東京だ……。最初はシャンゼリゼ(銀座・444席)で公開する予定だったように記憶するけど、蓋を空けたら新宿東映パラス2(328席)になってしまった。小屋が小さくなってしまったのは寂しいけど、客層から言えば銀座より新宿のほうがいいのかなぁ……。小さい小屋のほうが小回りが利くと思うので、ぜひヒットしてロングランしてほしい。何しろこの映画は、今年の邦画ナンバーワンなんですから。

 いい映画は何度観てもいい、という当たり前のことが実感できる映画です。最初観たときも絵の美しさには見惚れましたが、改めて観ても本当に感心するぐらい絵がきれい。それが編集されてひとつのシークエンスになると、そこに紛れもない「映画」が出来あがります。1シーン1カットの長回しと、細かなカット割りの使い分けも見事。長回しでじっくり見せるシーンの力強さと、カット割りのダイナミズムが同居していて、まったく違和感がありません。例えば、腰を痛めてボートに乗れなくなった主人公が駅のホームで同級生にからかわれるシーンは会話を切り返しのカットで刻み、電車に乗って主人公が悔し泣きするシーンは1カットで押さえている。長いカットを特別長く見せているわけではないのですが、短いカットが間に効果的に使われているから、そこそこの長さのカットでも、長回しと同じような効果が生まれるのでしょう。こうした長短のカットが、映画に独特のリズムやテンポを生み出しています。

 ボート競技というスポーツをモチーフにした映画ですが、内容は「スポ根ドラマ」ではありません。主人公たちがスポーツを通じて人間的に成長して行くとか、好成績を上げて賞賛されるとか、そんなドラマではない。彼女たちのボートの季節は高校1年生の春から2年生の秋で終ってしまい、その短い時間にすべてを燃焼しつくしてしまう。そんな一瞬の輝きの実感できることだけが、この映画の命なのです。映画は観客を無理やり泣かせたり、感動させたりはしない。感情の高まりのポイントで、音楽を少しかぶせれば観客が簡単に泣いてしまうようなシーンになっても、やせ我慢してそれを避けている。この映画はそれでも泣いたり感動したりしてしまう作品ですが、そうした感情の高まりは映画から押し付けられるものではなく、観客の内面から沸きあがってくるのです。

 同じ映画を2回観て、2回とも同じように感動してしまうのは、作品の完成度が高い証拠でしょう。僕は泣きはしませんでしたが、試写室では泣いてる人も多かった。この映画に一番近いのは何だろう……。『スタンド・バイ・ミー』かな……。でも、あの映画ほど湿っぽくないし、ノスタルジーに逃げ込んでもいない。とにかく、できるだけ多くの人にこの感動を味わってほしい映画です。


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