リーガル・エイリアン

1998/08/26 シネカノン試写室
日本で暮らすアメリカ人の生活を描いたドラマ。日本映画です。
教え子に誘惑されるくだりには同情した。by K. Hattori


 主人公は日本で暮らすアメリカ人。登場人物もほとんどが在日外国人で、台詞は99%が英語。当然字幕もついている。でもこれは、辻谷昭則という日本人監督が作った日本映画なのです。つい先日、フランス人監督が日本人俳優を使って日本語で撮った日仏合作映画『TOKYO EYES』という映画も観ましたが、これからはこうした「異色の邦画」が増えてくるような気がします。(おっと。『TOKYO EYES』はフランス映画なのかな?)

 主人公ピーターはニューヨークのオフオフ・ブロードウェイで舞台に立ったこともある、役者を志望のアメリカ人。日本では大学で英語教師として働き、今の自分が本当に役者なのか、それとも英語教師なのかわからなくなりかけています。アジア系の外国人と異なり、欧米系の外国人にとって東京は天国。競争の激しいアメリカと違って、日本でなら英語教師の仕事は簡単に見つかるし、CMや広告のモデルとしての仕事も得やすい。でもそんな状況に流されているうちに、役者への道はどんどん遠ざかってしまうような気もしている。同棲していたガールフレンドも役者志望でしたが、日本での安寧な生活に見切りをつけて、本当のチャンスをつかむためアメリカに帰ってしまう。ピーターは自分が役者だというアイデンティティを守るため、月に1度、外国人客の多い店でコントを演じている。でもそれでいいのか?

 日本で暮らす外国人を描いた映画ですが、特別に社会的なメッセージがあるわけではない。これで主人公がアジア系の外国人だとまた違ってくるのでしょうが、この映画では主人公ピーターの個人的な葛藤が中心テーマになっています。学校の教え子と深い関係になって悩んだり、ノイローゼになった友人の面倒をみたり、新しい恋に出会って心ときめかせたりする様子がていねいに描かれていて、僕はこの主人公が好きになりました。

 日本人女子大生のマリと深い仲になってしまうくだりは、ちょっと納得できなかったけど……。役者になりたいなら、英語教師の個人レッスンを受ける前に、やるべきことがあるんじゃないのかね。結局彼女は、最初から演技なんて二の次で、ピーターに近づくことが目的だったんじゃないかな。僕はこういう女の子が苦手なんですが、でも同じ立場になったら、やっぱり「ここで行かなきゃ男じゃない!」という気分になってしまうかもね。ディスコでピーターがマリにキスするシーンは、話の流れとしてぜんぜん不自然じゃなかった。

 あ、僕はむかし、似たようなタイプの女の子と付き合ったことがあるぞ。その人は僕と別れた後、アメリカ人と結婚しましたけど……。外国人と付き合う女性というのは、似たようなところがあるんでしょうかね?

 監督の辻谷昭則はロンドンの映画学校で学んだ人で、これが2本目の長編映画。主演のマイケル・ネイシュタットの本業は、英語教師ではなく、俳優学校の先生なんだそうです。映画と逆ですね。人気DJのクリス・ペプラーが、友人役で出演して面白い味を出してます。

(原題:LEGAL ALIENS)


ホームページ
ホームページへ