ガンモ

1998/07/21 GAGA試写室
『KIDS』の脚本家が描く、リアルで残酷な子供たちの世界。
タイトルは『KIDS-2』にすべきだった。by K. Hattori


 ピンクのウサギ頭巾をかぶった少年が、オモチャのようなアコーディオンを弾いているビジュアルからは想像も出来ないような、ハードでくたびれる内容の映画だった。僕は病み上がりでただでさえくたびれていた上、医者から処方された風邪薬まで飲んでいたので、途中でつい眠りこけてしまいました。この映画は映倫の作った「PG-12」というレーティングを、日本で最初に適応された栄えある第1号作品。(同時にPG-12に指定されたものに、イギリスのサスペンス映画『クライムタイム』がありますが……。)何やらマンガチックな『ガンモ』というタイトルと、キービジュアルになっているピンクのウサギにだまされて、まかり間違ってもこの映画に子供を連れていったりしないように。あらかじめ「こんな映画であろう」という予想をした内容とは、まったく違った映画を観せられることになります。

 この映画に一番近い映画は、ラリー・クラークの『KIDS』でしょう。『KIDS』は大都会で暮らすローティーンの生態を生々しく描いた映画ですが、この『ガンモ』は田舎町のローティーンの生態を描いている。2本の映画が似ているのも当然で、『ガンモ』の監督ハーモニー・コリンこそ、19歳で『KIDS』の脚本を書き上げた輝かしい経歴の持ち主なのです。『ガンモ』には、『KIDS』で主人公の少女を演じたクロエ・ゼヴィニーも出演しています。映画のタッチも『KIDS』を踏襲し、どこまでが脚本通りの芝居で、どこからが即興なのかさっぱり区別が出来ないリアルさ。中にはドキュメンタリー風のところもあって、この映画がどこまでフィクションなのか悩んでしまいます。

 本当は映画に登場する内容がフィクションだろうとノンフィクションだろうと、観る側には関係ないはずだし、僕も普段はそう考えている。でもこの映画は内容があまりにも残酷なので、頭の片隅で「これをすべて作り話だと思いたい」という防衛反応が働くのでしょう。でも登場する映像は、そんな観る側の気持ちをどんどん裏切ってゆく。この映画に出てくる子供たちの姿は、「作り事」と割り切ってしまうにしては、あまりにも切実すぎる。空気銃を持った少年たちが、次々に猫を射殺したり、人気のない家に忍び込んで、寝たきり老婆に空気銃を発射し、生命維持装置のスイッチを切ってしまったり……。直接的な描写はないので、ホラー映画的な「残酷度」では計れないのですが、思わず目を覆いたくなる描写の連続です。「なんでそこまで」と、吐き気さえ覚えます。

 『KIDS』との大きな違いは、都会と田舎という地域性だけでなく、『ガンモ』には明確なストーリーラインがなく、単なるエピソードの羅列、スケッチの集積になっていることです。ストーリーがあると、それがハッピーな結末であれ、アンハッピーな結末であれ、「物語の終わり」という救いがある。でもこの映画は、そうした救いを用意しない。子供たちの時間はどこまでも続き、彼らのいる荒涼とした風景に終わりはないのです。

(原題:GUMMO)


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