チャイニーズ・ゴースト・ストーリー
スーシン

1998/07/08 ユニジャパン試写室
ツイ・ハークがプロデュースしたファンタジックなアニメ映画。
幽霊と人間の恋をCGを駆使して描く。by K. Hattori


 ツイ・ハークの出世作である『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』を、自らのプロデュースでアニメ映画化。前作のリメイクということではなく、人間と幽霊の恋という作品コンセプトを生かした、別の物語を作っています。言うなれば『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー4』をアニメで作ったという感じかな。といっても、僕はこのシリーズを観ていないので、どの程度がシリーズとの共通項なんだかよくわからなかったりもします。いずれビデオで見なくてはと思っているんですが、なかなかその時間がとれなくてね……。

 香港には本格的なアニメ産業というのがないそうで、今回の映画は背景画のCGを香港で製作し、人物がらみの絵は日本で作っています。日本からは、遠藤徹哉、小松原一男、なかむらたかしといったメンバーが参加し、言葉や映画製作体制の違いといった壁を乗り越えて作品作りに挑んでいる。この映画はギンギラギンのCGの中に、2Dのキャラクターをうまく溶け込ませるという挑戦をしており、これが作品の荒唐無稽なタッチにうまくはまって、なかなかユニークな映像作品になってます。この映画には、メイキング・ビデオ付きの前売券というのが数量限定で用意されているのですが、これを見てから映画を観ると、何も知らずに映画を観るよりずっと楽しめると思う。特にアフレコ場面はみもの。アニタ・ユン、チャン・シウチョンなど、香港の若手トップスターたちが、嬉々としながらアフレコに参加している様子は楽しそうだし、あらかじめ「この人がこのキャラ」と目星をつけてから映画を観た方が楽しめるでしょう。

 3DCGは最近のディズニー映画でもごく普通に使われているし、春に公開された『銀河鉄道999/エターナル・ファンタジー』でも部分的に3DCGと2Dキャラノ合成が行われてました。でも、この『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー スーシン』では、最初から「3DCGの上で2Dキャラを動かす」ことを目的に作られています。とにかく映画の8割以上のシーンで、背景はフルCG。幽界という場所を描いているため、CG特有のヌメヌメした質感も、ほとんど気になりません。CGとキャラの合成には最初違和感があるのですが、だんだん慣れてくると、ほとんど気にならなくなる。むしろCGならではのカット割やカメラポジションの移動など、積極的にCGの効果を使おうとしているシーンには、従来のアニメを越えようとする意気込みが感じられます。

 初恋の女性の面影を追って旅を続ける少年アニンと、霊界の少女スーシンが恋に落ち、輪廻転生の列車に乗って生まれ変わろうとするクライマックスは、ちょっと感激してしまいました。自分の生まれ変わる場所をアニンに告げ、「忘れないで、必ず迎えに来て」と叫ぶスーシンが、じつにけなげで可愛いのです。こういう場面の盛り上げは、アニメも実写もCGも関係ないですね。ラストは「おいおい、それでいいのか」とも思いますが、クライマックスの盛り上げが利いているから気にならない。

(原題:小倩)


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