ラスト・ウェディング

1998/06/08 メディアボックス試写室
愛し合う恋人たちのために、友人たちが手作りの結婚式を開く。
実話をもとにしたオーストラリア映画。by K. Hattori


 現実の世界では、誰がどんな人と付き合おうと本人同士が愛し合っているなら、それで一向に構わないのです。でも映画の場合、「あのふたりは似合いのカップルね」と観客がすんなり納得できる組み合わせにしてくれないと困る。「なぜあのふたりが付き合ってんの?」と一度疑問を持たれたら最後、どんなに話がよくできていても、そこで白けてしまうからです。この映画を観て、僕はジャック・トンプソン扮するハリーと、ジャクリーン・マッケンジー扮するエマが恋人同士だとは、とても見えなかった。トンプソンとマッケンジーじゃ、歳が親子ぐらい違うじゃないか。僕は最初、ハリーはエマの保護者か親戚なんだとばかり思ってました。このふたりが結婚するというのは、すごく違和感あるよ。せめてふたりがどういう経緯で知り合ったのか、どんな関係だったのかなど、少しでも台詞で補ってくれればいいんだけど、この映画ではそうしたサービスは一切なし。困るなぁ……。この物語は実話を元にしているそうなので、モデルになったカップルに年齢差があったのかもしれないけど。

 病気で余命幾ばくもないエマと、恋人ハリーのカップルは、友人4人と美しい島にやってくる。ハリーはエマとの結婚を周囲に告げ、何がなんでも今週中に彼女と結婚式を挙げると宣言する。ところが、教会での式は手続き上の問題や牧師のスケジュールの都合で不可能。友人たちはハリーとエマのために、すべて手作りの結婚式を行うことにする。前半の山場は、神父や牧師なしで、どうやって式を行うかという部分。このあたりは「結婚届を役所に出せばOK」という日本人にはわかりにくいかもしれない。要するに彼らは「神の前で結婚を誓うこと」が正式な結婚には不可欠だと考えており、そのためには神父や牧師が絶対に必要なのです。日本人が「結婚式は教会で挙げるのがオシャレ」と言うのとは、少しわけが違う。彼らは神の前で「死がふたりを分かつまで共に暮らす」ことを誓うことに、すごくこだわります。

 僕はこの映画にイマイチ感動できませんでした。いろいろなテーマを、ひとつの物語の中に盛り込みすぎているような気がするのです。もう少し全体を整理して、どこを感動のクライマックスにするかを考えた方がいいと思う。本当なら泣かせどころになるはずの場面が、いちいち上滑りして、いまひとつ力が入りきれていないような気がするのです。船長が詩を朗読する場面しかり、世界一大きなダイヤモンドしかりです。天使の登場も、あまり印象的な効果を生み出せなかった。どのエピソードも、美しい島の風景に負けています。ハイスピード撮影を多用して、全体をふわふわしたイメージにしてしまったのもマイナスだった。物語の根本部分は、もっとがっちりと腰を据えて撮ってくれないと困る。

 役者はそれぞれがんばっているだけに、映画のこのデキは残念です。僕個人としては、『エンジェル・ベイビー』のジャクリーン・マッケンジーに、再び出会えただけでも収穫ですけどね。でも、全体に甘すぎです。

(原題:Under The Lighthouse Dancing)


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