ニルヴァーナ

1998/05/19 TCC試写室
クリストファー・ランバート主演のイタリアン・サイバーパンク。
道具立てが凝っていて楽しめる。by K. Hattori


 新作「ニルヴァーナ」の締め切りを3日後に控えた売れっ子ゲームデザイナーのジミーは、ゲームの中のキャラクターが特殊なウィルスに感染したことで意志を持ちはじめていることに気付く。ゲームの中で何度も同じ会話や生と死を繰り返しているメイン・キャラクターのソロは、ゲーム開発者であるジミーに、この繰り返しをすべて終わらせるため「ニルヴァーナ」を消去することを懇願する。ゲームがこのまま発売されてしまえば、数百万セットにコピーされたソロが、何億回もの生と死を無理強いされることになる。ジミーがソロの願いを聞きいれるためには、メインコンピュータに侵入できる凄腕のハッカーを雇わなくてはならない。ジミーの旅が始まる。

 近未来を舞台にしたサイバーパンク・ムービー。主人公のゲームデザイナーを演じているのは、『ハイランダー』シリーズや『モータル・コンバット』のクリストファー・ランバート。監督・脚本は『エーゲ海の天使』でアカデミー外国語映画賞を受けた、ガブリエレ・サルヴァトレス。イタリア・フランス合作の映画だが、劇中の言葉はイタリア語。クリストファー・ランバートが英語とフランス語に堪能なのは知っているけど、イタリア語も自前なのかな。それとも吹き替えだろうか。映画の中でおかしくて笑っちゃうのは、ゲームの主人公ソロに殺し屋が「このマカロニ(スパゲティ)野郎!」みたいな台詞を言う、その台詞がイタリア語だってこと。イタリア人がイタリア人に向かって「このマカロニ野郎!」もないと思うけどな……。この映画はアメリカでミラマックスが配給することになっているんですが、たぶん英語版ではこの台詞もおかしくないんでしょうね。

 風邪気味で医者からもらった薬を飲んでいたせいか、それとも昼食後だったせいか、映画の前半は睡魔に負けて眠ってしまった。そのせいで、物語の細部がさっぱりよくわからない。(これは後日、改めてもう一度観なくてはならないだろう。)映画後半にあるハッキング場面は、『ディスクロージャー』『JM』などに登場するバーチャル・リアリティの描写より洒落ていると思う。いかにもハイテク風のCG描写にせずに、あえて古びた建物の中を歩くような設定にしたのがかっこいい。ハッキング用端末が置いてあるホテルの部屋と、バーチャル・リアリティで表現されるネットワーク内部の描写をカットバックして、ハッキング風景を感じさせる演出に見事に成功していると思う。これはアイデアです。

 主人公を助けるジョイスティックという男は、両目を売って、かわりに電子アイを眼窩に移植している。このあたりは、ウィリアム・ギブソン風のサイバー・パンク描写です。同じく主人公を助けるナイマという女性は、記憶移植の事故で1年以上前の過去を失っている。これもギブソン風。主人公の勤める会社が「オコサマ(お子様)スター社」という日系企業だという設定も、サイバー・パンクでしょ。『JM』に失望した人には、なかなか面白い映画だと思いますよ。

(原題:NIRVANA)


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