宇宙ステーション
ミール

1998/05/15 東京アイマックス・シアター
アメリカとロシアが共同で進めている宇宙実験の記録映画。
宇宙旅行が疑似体験できる臨場感。by K. Hattori


 アメリカのスペースシャトルと、ロシアの宇宙ステーション・ミールのドッキングと、冷戦時代は敵同士だった米露両国の飛行士たちの交流を描いたドキュメンタリー映画。大面積フィルムを使用したアイマックス方式の映画で、ロケットやシャトル打ち上げの様子や、宇宙空間の映像がじつに美しい。アイマックスといえば3D映画が有名ですが、これは普通の2D作品。とはいえ、画面のシャープさや解像度の高さは普通の35ミリ映画を凌駕しており、その臨場感たるや、まるでガラス越しに現実の風景を見ているような錯覚におちいるほどだ。僕のような一般人が、実際に宇宙旅行に出かけられるようになるには、あと何十年もかかると思う。でもこの映画を観ると、居ながらにして宇宙を旅しているような気になれる。映画はバーチャル・リアリティです。

 この映画はテーマを語る構成上、米露の宇宙開発の歴史を過去の記録フィルムを用いて語る必要があるし、船内活動の様子などは、小型のビデオカメラで撮影されている部分もある。アイマックスの映像で宇宙旅行の気分に浸っていても、突然こうした小型映像で現実に引き戻されてしまうのがちょっと残念。ただし、それによってこの映画はただの「映像体験」以上のものになっている。現時点では、現在のような構成にならざるを得ない部分があるのかな。この映画は40分の映画ですが、同じ時間を使って、宇宙船から延々宇宙から見る星空や、青い地球の様子ばかりを延々映し出している映画があっても面白いと思いますけど……。

 アイマックス・シアターには、以前3D映画『愛と勇気の翼』を観に行ったことがある。これは目や首が疲れて、40分の上映時間が限界だと思いましたが、今回の『ミール』はそうでもない。これなら少なくとも1時間はいける。目の前が全部スクリーンという構成は、それなりに観る者にストレスを与えるのですが、2Dと3Dとでは雲泥の差があります。このぐらいの画面解像度とスクリーンサイズになると、臨場感という点では2Dと3Dにあまり大きな違いはないように感じる。観客の疲れを考えると、総合的には3Dより2Dの方がいいんじゃないだろうか。この日は『ミール』の前に、ヒマラヤ登山の映画の予告編を2Dで上映していましたが、雪山の上を小型飛行機が飛ぶ場面は、3D映画である『愛と勇気の翼』にちっとも引けを取らなかった。

 アイマックス・シアターは観客動員の点で苦戦しているようですが、高島屋タイムズスクエアで買い物をしている途中に、時間潰しにサッと観てくるには面白いイベントだと思います。値段も普通の映画より安いしね。こういう映画を観ると、「フィルムメディアはまだまだ可能性があるなぁ」と思ってしまう。ハイビジョンだろうがなんだろうが、アイマックスに匹敵する臨場感は与えてくれない。でもこんな素朴な喜びかたって、100年前にリュミエールの映画を観ていた人たちと変わらないね。そういう意味では、すごく原始的なものです。

(原題:MISSION TO MIR)


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