長くつ下のピッピ

1998/05/09 中央会館
リンドグレーンの名作をアニメーション映画化。
日本語版は歌の録音に難あり。by K. Hattori


 アストリッド・リンドグレーンの有名な児童文学作品「長靴下のピッピ」は、今までも何度か映画やテレビになっている。IMDbで検索したら、全部で6本の映画がリストアップされました。「長靴下のピッピ」ことピッピ・ナガクツシタは、1945年にスウェーデンで誕生して以来、世界中の子供たちに親しまれているスーパー・ヒロインなのです。今回観た映画は、そんな「ピッピもの」の最新作。スウェーデン・ドイツ・カナダ合作のアニメーション映画です。これは衛星で放送されているテレビシリーズもあるそうですが、僕はそちらは未見。ちなみに僕にとってのピッピ原体験は、昔NHKで放送されていた実写版です。あれはどこの製作だったんだろう。ピッピの声はキャロライン洋子(←こんな字でいいのかな?)でした。

 原作は読んでいないのですが、ピッピのキャラクターは昔テレビで見ていたのと同じものなので、すんなり馴染めました。赤毛のおさげ髪、左右別々の長い靴下をはいて、家族は猿と馬、住んでいるのはゴタゴタ荘。(昔のテレビ版では「つぎはぎ荘」だったような気がします。)母親とは死別。父親は世界の海を旅するナガクツシタ船長。ピッピは9歳の女の子ですが、世界一の力持ち。愛馬をベランダから庭に、片手でひょいと持ち上げて運んでしまいます。部屋の中には金貨がぎっしり詰まった箱がひとつ。船で暮らしていたピッピには経済観念がまったくないので、どんな小口の支払いも、金貨1枚で済ませてしまう。相手が釣り銭を渡そうとすると、「そんな銀色のお金なんていらないわ」と言って受け取らないのです。(今回のアニメには、この場面がなかったのが残念。楽しみにしてたのに〜。)

 今回の映画は、ピッピと父親の乗る船が嵐に遭遇し、父親が波にさらわれて行方不明になるところから始まります。ひとりきりになったピッピは、猿のニコルソンと馬のホースをつれて船を下り、ゴタゴタ荘で父親の帰りを待つことになります。隣家のトミーとアニカとすぐに友達になったピッピは、パンケーキを山ほど焼いたり、サーカス見物に行って怪力男と勝負したり、ピッピの金貨を狙う泥棒を撃退したり、ピッピを孤児院に送ろうとする人たちを追い払ったり、大活躍をします。

 ピッピは会う人ごとに「もっとお行儀よくしなさい」と言われますが、ピッピの魅力は何といっても、そのお行儀の悪さだから、これはなおりっこない。ピッピは子供たちがやりたくてもできないことを、何でも躊躇せずやってのける。山のようなパンケーキに、シロップを滝のように振り掛けて食べたり、テーブルの上のケーキに頭からかぶりついって全部食べてしまったり……。これがかっこいいし、じつにかわいいのです。

 製作費15憶円相当の作品ということですが、なるほど手間のかかっていそうな映画です。難を言えば、歌の場面で言葉が聞き取りにくくなることかな。日本語版だから字幕で意味を補うこともできない。ちょっと残念。

(原題:Pippi Langstrumpa)


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