初恋

1998/03/17 シネセゾン試写室
ウォン・カーウァイがプロデュースした不思議な味の恋愛映画。
自由奔放な前半のぐちゃぐちゃぶりがオカシイ。by K. Hattori



 金城武とカレン・モクが「共演」する映画かと思ったら、これが一種のオムニバス映画で、ふたりは別々の話に登場してます。断片的にふたりがからむところもありますが、基本的にはすれ違い。カレン・モクのかわりに金城君の相手役を演じているのは、台湾の新人女優リー・ウェイウェイ。これがすごく可愛い。不眠症の少女を演じているのですが、いや〜、可愛いです。(こればっかりだね……。)透明感のある美少女タイプで、今後は日本でも人気が出ることでしょう。既にウォン・カーウァイ監督と2本の映画出演の話がまとまっているそうですし、写真集なども出るそうな。この映画の製作会社でもあるアミューズあたりが、日本でも芸能活動をさせるつもりなんじゃなかろうか。ビビアン・スーとはまた違った魅力で、日本でも人気が出そうです。

 この映画は、香港の個性派俳優エリック・コットの監督デビュー作。『天使の涙』『ブエノスアイレス』のウォン・カーウァイ監督が初めてプロデュースした作品だそうで、主演の金城武やカレン・モク、撮影のクリストファー・ドイルなど、ウォン・カーウァイ映画の常連たちが数多く参加しています。監督自身、この映画がウォン・カーウァイ映画のファンを対象にしたマーケティングになることを十分に意識しているらしく、中にはパロディ風の台詞や場面が登場して、大いに笑わせます。

 この映画は冒頭30分をメイキングに費やすという、いささか不思議な作りになっています。監督のエリク・コット本人が画面に登場し、映画『初恋』の製作に至る裏話をとくとくと語りはじめる。映画化されるに至らなかった幾つかのプラン、単なる思い付きとしか思えないようなストーリーを、映画の予告編風に映像化してみせるのですが、それだけで1時間37分の映画の3分の1近くも使っているんだから、この監督はどうかしてます。

 この「予告編」に登場するのは、金城武、カレン・モク、リー・ウェイウェイ、エリック・コット(監督兼任)といった、後半の本編に登場する役者たち。日本のAV女優に恋をして日本に行く青年の話、香港のマッサージ師が中国で美少女に会う話、香港を訪れた日本のおちこぼれやくざの話などが、次々と演じられます。どこまでが本気で、どこからが冗談だかわからない、摩訶不思議な構成の映画でした。ただし、金城武のちょっとずれた日本語と、監督本人が演じた『AV大久保』は、日本人として思わず笑わずにいられない怪作です。

 映画はこの「予告編」から、継ぎ目なしに「本編」に入ります。金城武扮する清掃夫とリー・ウェイウェイ演じる不眠症の少女の不思議なデートの物語と、昔別れた恋人カレン・モクに付きまとわれてパニックを起こす雑貨店主エリック・コットの物語の2本立て。こうしたオムニバス形式も、ウォン・カーウァイの『恋する惑星』や『天使の涙』を多分に意識したものだと思います。とにかく不思議な映画でした。面白いけどね。

(原題:初纏恋后的2人世界)



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