甦る優作
「探偵物語」特別篇

1998/02/09 東映第1試写室
松田優作が死んで今年で丸9年になることとはまったく無関係に、
突然公開が決まった「探偵物語」特別篇。by K. Hattori



 シリーズ完結を宣言した『極道の妻たち・決着(けじめ)』が思うほど客を集めなかったことから、急遽埋め草的に公開される、松田優作主演テレビドラマの劇場版。東映は正月番組の『北京原人/Who are You?』も不入りだったようだし、去年がいくら好調だったからといっても、これでは先が思いやられるなぁ……。テレビで「探偵物語」が放送されていたのは、今からふた昔ほど前の話です。いくら優作再評価の気運が高まり、CMなどに優作が登場しているからといって、ごく普通の人が、わざわざ20年近く前のテレビドラマを、映画館まで観に行くもんでしょうかね? 観客動員力という点で、僕はこのプログラムにすごく疑問を感じてます。

 今回の『特別篇』では、テレビシリーズの第1話「聖女が街にやって来た」と、第5話「夜汽車で来たあいつ」をニュープリントで上映。また、松田優作主演映画のハイライトシーンや、テレビの予告編などを編集して、ドラマ2話の前後にくっつけている。この「新作」部分が『特別篇』たるところです。ナレーターは竹中直人。僕はこの「新作」部分が、少し面白く感じられた。すごく短い時間ですが、標準的な人物ドキュメンタリーになっているのです。どうせなら、関係者のインタビューなど、取材にもう少しはお金をかけて、きちんとした「松田優作伝」を作ればよかった。45分のドキュメンタリーに「探偵物語」を1本つけて、映画館では一見2本立て上映のようにすれば面白かったのに……。

 日本にはドキュメンタリー映画の伝統がないので、今回のような中途半端な形になるのかもしれません。今回、映画冒頭に数分間だけある「優作伝」だけでも凄い迫力なんだから、縁の深い俳優や監督のインタビューを少しずつ入れれば、それだけで1本の映画として十分観られるものになったと思うんだけど。なまじ映画のハイライトシーンなど見せられてしまったものだから、余計に欲求不満になってしまう。やっぱり『野獣死すべし』の松田優作は最高だよ! ちょっと観ただけで恐いもんね。

 「探偵物語」本編については、当時からの熱狂的なファンが大勢いるでしょうから、僕は何も言いません。何しろ僕は、その頃このドラマを見てなかったし、再放送などでも見る機会がなかった。(あっても見てなかった。)僕のような遅れてきた映画ファンから観ると、このドラマって、松田優作の代表作『遊戯』シリーズからハードな部分を抜き取って、主人公が持つ三枚目の魅力だけを大きく育てたような作品に見える。監督の村川透、脚本の丸山昇一など、スタッフも『遊戯』シリーズのまんまだもんね。「工藤ちゃ〜ん」の服部刑事を演じている成田三樹夫も、松田優作とは映画で何度も共演している仲。気の会う仲間で、ワイワイ作ってる感じがします。

 映画『人間の証明』や人気ドラマ「熱中時代」などを引き合いに出し、パロディとも呼べないようなギャグを軽く繰り出します。試写室はご年配の方ばかりなので、結構受けてました。若い観客にはわかるまい。


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