リング

1998/01/14 東宝第1試写室
見たものは7日目に死ぬと噂されている呪いのビデオを巡るミステリー。
この映画を観た後は、しばらくテレビが見られない。by K. Hattori



 『CURE/キュア』を観た後、「これを凌駕するホラー映画はなかなか現われまい」と思っていたのですが、まさか天下の東宝配給でこんな映画が出てくるとは思いませんでした。僕は鈴木光司の原作も読んでいないし、中田秀夫監督の『女優霊』も観ていないし、ビデオにもなっている飯田譲治版『リング』も見ていない。まったく予備知識なしで観に行ったので、この映画には不意打ちの驚きがありました。この映画は続編(?)の『らせん』と2本立てで劇場にかかるのですが、東宝配給で2本立て興行というと、昨年夏の『キャッツ・アイ』『演歌の花道』以来でしょ。同じようなレベルの映画だと思ってたんだよな。油断してなめてかかっているところに、体重の乗ったカウンターパンチを食らった気分です。

 「見たものは7日目に死ぬ」と噂されている、謎のビデオを巡るミステリーです。主人公はテレビ局に務める女性ディレクター。彼女は女子高生たちの噂話を取材しているうちに、噂が根も葉もないものではなく、実際に何人かの犠牲者が存在することを知る。偶然ビデオにつながる手掛かりを発見した彼女は、確認のためにそのビデオを見てしまうのだ。映っていた映像を見て彼女は確信する、「これが問題のビデオに間違いない!」と。だとすれば、自分もあと7日で死んでしまうのか?

 ここから物語は急展開。ビデオに残された細かなメッセージをたどって、徐々に解き明かされてくる忌まわしい過去の記録。ビデオに映されていた女に手招きされるように、事件の核心に迫って行く主人公たち。残された時間は刻一刻と少なくなる中、ついにすべての謎が解ける。だが、それは新たな恐怖の始まりなのだ……。

 この映画には、過去のさまざまなホラー映画やファンタジー映画の影響が見られ、ほとんど引用と思えるような絵作りもある。ちょっと思いつくだけでも、『シャイニング』『ビデオドローム』『ポルターガイスト』『デッドゾーン』などだ。こうした作品群から良質の表現を取り出すだけでなく、きちんと中田流のアレンジをしていることが、この映画の完成度を高めている。描かれているのは「呪い」というスーパーナチュラルな素材なのだが、超常現象の描写に逃げず、あくまでも現実世界から「呪い」にアプローチして行くのも面白い。僕なんかビデオが「呪い」に関係するものだと知った途端、「御払いでもでもすればいいのに」と思ってしまった。でもこの映画はそうしない。推理小説のように、「呪い」に秘められた事実を、ひとつひとつ洗い出して行く。

 観ている間、何度か体中が粟立つような「マジで恐い」思いをさせられてしまった。映像のトーン、編集のリズム、音響効果などが、じつに巧みに観客を怖がらせてくれる。飯田譲治が監督する『らせん』はまだ観ていないのだが、はっきり言ってこの『リング』だけでも入場料ぶんの価値は絶対にあるぞ。ホラー映画が苦手な人は絶対に観てはいけない映画ですが、好きな人は絶対に見逃してはいけない映画です。熱烈オススメ!


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