ホワイトハウスの陰謀

1997/08/29 ヘラルド映画試写室
ホワイトハウスで起った女子職員殺害事件を捜査する刑事の活躍。
女警護官役のダイアン・レインがかっこいい! by K. Hattori



 大統領官邸内での犯罪を描いた映画には、現在上映中の『ザ・ターゲット』の記憶が生々しいのですが、こちらはそれより数段できのいい映画になっています。映画の冒頭から末尾まで、途中やや息切れするところもありますが、概ね快調なペースでエピソードが積み重ねられて行くし、犯人の招待や目的が最後の最後までわかりにくくなるように伏線もバッチリ。敏腕刑事役のウェズリー・スナイプス、女性警護官役のダイアン・レイン、大統領の側近にアラン・アルダなど、役者の格が『ザ・ターゲット』とはそもそも違う。監督のドワイト・リトルは『ラピッド・ファイアー』『フリー・ウィリー2』などの作品がある人ですが、僕は今まで彼の作品を観たことがなかった。今回の映画を観たところでは、中堅の実力派といったところでしょう。特別抜きんでたものは感じさせませんが、職人的な上手さを感じさせます。

 「大統領官邸での出来事」「大統領と側近の犯罪」というのは、アメリカ映画の中のひとつのジャンルになっている。当然定番のエピソードやアイテムというのがあって、この映画にもそれが十分に生かされています。今回登場するアイテムは、南北戦争当時に作られたという、ホワイトハウスと外部を結ぶ秘密トンネル。このトンネルは確か、アイヴァン・ライトマンの大統領コメディ『デーヴ』にも登場してました。こんな物が本当にあるのかどうかは、この際関係ないのです。トンネルは映画の世界では必ず存在するし、それを登場人物たちはいちいち確認したり論証したりはしない。「どうやって大統領官邸に入るつもり?」「トンネルを使おう。入口は君が知っている」。なんと会話はこれだけ。これで十分に用が足りるのです。この手の「政府は必ず存在を否定するけど、国民のほとんどがその存在を信じて疑わないもの」というのは他にもあって、『インデペンデンス・デイ』に出てきた砂漠の秘密基地なんてのもそのひとつ。

 官邸と外部を結ぶトンネルの存在は誰でも「知っている」から、それだけではサスペンスもミステリーも成り立たない。だから映画ではさらにそれをひとひねりする。このあたりが、終盤のクライマックスの見せ場になっていますが、アクションの組み立てが上手で、人物の位置関係などにも無理を感じさせないのはさすがです。

 後半で少しずつ謎が解けて行くところはとてもスリリングで面白いのですが、ここで書いてしまうとまだ映画を観ていない人に気の毒なので書きません。

 この映画には「北朝鮮でアメリカの兵士が人質になっている」というエピソードが冒頭から登場し、アメリカが北朝鮮に対して軍事行動を取るか否かという議論が、報道マスコミと閣議の中心議題になっています。こうした「テロ国家」としての役回りは、少し前までのリビアあたりが担っていたものでしょう。今やアメリカ映画でも、北朝鮮は国際的なテロ国家という認知がなされているわけですね。それにしても、あのアメリカ兵たちはそもそも何をしに北朝鮮まで行ったんだ?


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