チャイニーズ・オデッセイ
Part II 永遠の恋

1997/07/19 大井武蔵野館
孫悟空として使命に目覚めた主人公が牛魔王を相手に大暴れ。
恋人たちの行く末を描いたラストにホロリ。by K. Hattori



 Part1の最後でようやく孫悟空に変身した主人公が、運命の女性との出会い、恋人との別れなどの試練を乗り越えながら、自分本来の役割に目ざめて天竺へと旅立って行くまでを描く完結編。観世音菩薩、仏を守る四天王や神々、牛魔王をはじめとする妖怪たちなど、ようやく本来の「西遊記」的な物語が動き出し、最後は孫悟空と牛魔王の一騎打ちという大活劇がクライマックス。登場しては死んでいった人物たちが、それぞれ生まれ変わって別の人生を歩んでいる様子を見せるラストには感動してホロリとさせられる。笑いあり、涙あり。サービス満点の映画作りに、ニコニコしながら劇場を後にしました。

 前編『月光の恋』に比べて3倍ぐらい物語が入り組んでくるのですが、そんな混乱ぶりなど意に介さぬ風に突き進むパワフルな筋運び。物語の筋立てを飲み込む前から、先へ先へと進んで行く登場人物たち。登場人数が増えたのに加えて、ヒロインが二重人格。その人格の片方が孫悟空の子分・猪八戒の人格と入れ替わって……、もうわけがわかりません。前編にも登場していた妖怪娘、前編のラストで登場した運命の女性、牛魔王の妻と妹など、登場するすべての女性が主人公に熱を上げ、前編では考えられなかったにわかモテモテ状態に突入。それが相互に人格を入れ替えたり、登場しては消え、消えては再登場を繰り返すので、僕は途中から筋を追いかけるのをあきらめてしまった。それでも映画は面白い。

 この後編でもナンセンスなギャグは健在。女神ジーハに刀を突き付けられた主人公がその場逃れの嘘をつく場面は大笑いしたし、盗賊たちが主人公の寝言の回数を事細かに数えているくだりも面白い。最高なのは、三蔵法師が突然「オンリー・ユー」の替え歌を歌い出す場面。この突発性ミュージカルには複線があって、直前にロマンチックな場面で「ミュージカルならここで女性が歌うだろうな」と思わせる部分があるのです。タイミングといいテンポといい、僕は当然歌い出すだろうと身構えていたんですが、そこでは歌わず肩すかし。その効果的なはぐらかしが生きているから、三蔵法師が歌い出したときは「ここで来たか!」とビックリすると同時に、嬉しくなってしまいました。歌はひどいですけどね。

 牛魔王との対決を描くクライマックスは、「これぞ西遊記」という孫悟空の大活躍ぶりが見もの。雲に乗って登場し、耳の穴から取り出した如意棒をぶんぶん振り回したり、引き抜いた毛を吹き飛ばすと何十人という分身が出てきたりする様子は痛快そのもの。対する牛魔王も口の中から取り出した巨大な団扇で応戦するなど、きちんと西遊記の段取り通りの芝居をしてくれます。この場面では、音楽も京劇風になるのが嬉しい。

 僕は主人公が女たちと幸せになる結末を期待していたんだけど、そうならないところがほろ苦い後味を生んでいます。如意棒を肩に担ぎ、ゆっくりと去って行く孫悟空の姿は格好よすぎる。前後編合わせ、チャウ・シンチーの芸域の広さを堪能できる映画でした。


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