チャイニーズ・オデッセイ
Part I 月光の恋

1997/07/19 大井武蔵野館
主人公が500年の時を経て恋人と愛し合うチャウ・シンチー版西遊記。
アクションとラブロマンス大盛りのコメディ映画。by K. Hattori



 チャウ・シンチー主演の時代劇アクション・コメディ。ベースになっているのは「西遊記」ですが、物語はそこからどんどん脱線して、独自のものになっている。この映画は香港の大スターであるチャウ・シンチーの映画としては、日本で最初に紹介されたもの。僕はその後『マッド・モンク/魔界ドラゴン・ファイター』などで彼の映画の魅力にどっぷりはまってしまったので、この『チャイニーズ・オデッセイ』シリーズをロードショー公開時に観逃したことを悔やんでいた。今回この大作映画を、前後編通しで観られたのは嬉しい。

 今回の彼の役どころは、三蔵法師を裏切ろうとした罪で500年後に転生した孫悟空。彼は前世の記憶を無くし、今は街道筋を荒らしまわる盗賊の頭になっている。そこに孫悟空と合流しようとする三蔵法師を狙う美人妖怪姉妹が現われて、盗賊たちのアジトは大混乱。そうこうする内に、なぜか主人公と妖怪のひとりとの間には恋が芽生える。どうやら500年前に孫悟空と妖怪は恋人同士だったらしい。500年を経て焼けぼっくいに火が着くんだから、この物語のスケールがわかろうというもの。恋には誤解やすれ違いがつきものですが、一方がチャウ・シンチーでもう片方が妖怪だから、混乱のスケールも大きくなる。死ぬの生きるのという騒ぎが、天地を揺るがす大騒動にエスカレートして行きます。

 チャウ・シンチーは黙っていれば文句なしに二枚目なんですが、それがとんでもないギャグを次々繰り出すという点で、香港のジム・キャリーと呼んでもいい人です。あまり身体の動かない人かと誤解していたのですが、この映画を観ると、身体も顔もじつによく動きますね。アクションシーンにはスタントマンも使っているんでしょうけど、孫悟空の扮装をしているときの身のこなしなどはただ者ではありません。しかしよくもこう次々と馬鹿なことをやれるものだと、いつもながら感心。今回の大馬鹿大賞は、身体に着いた火を消すため、部下たちが彼の股間をドカドカ踏みつける場面。苦痛をこらえるため口にくわえた木片をかみ砕いてしまう場面には大笑い。最後に洞窟の中で呪文を使って時間を行き来する繰り返しギャグも、なかなかリズミカルで面白かったです。

 この映画は物語のスケールもでかいけど、製作にもそれなりの金がかかってるように見えます。チャウ・シンチーの孫悟空メイクもなかなか見栄えがするし、アクションシーンでのからみの数も多い。特撮も手が込んでます。女妖怪のひとりが化ける巨大グモは、かなりていねいに作られていたし、操演にも迫力がありました。

 取り止めもなく、次から次へとギャグが繰り出されるので、観ていてもまったく飽きません。孫悟空の話なのに、主人公がいつまでたっても孫悟空としての記憶を取り戻さないというのも人を食ってます。妖怪姉妹たちもなかなか魅力的だし、剣戟シーンもスピード感があって見応えがある。アクションと、ラブロマンスと、コメディの、良質な混合物を堪能できます。


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