秘密の絆

1997/07/15 FOX試写室
リブ・タイラーの魅力がこの映画の後味を爽やかなものにしている。
彼女は表情より目で芝居をする女優です。by K. Hattori



 1950年代から60年代初頭のアメリカを舞台に、家族や恋愛や自分自身を見つめながら成長して行く若者を描いた青春ドラマ。監督は『フールズ・オブ・フォーチュン』『サークル・オブ・フレンズ』などを撮ったパット・オコナー。主人公ダグ・ホルトを演ずるのは、『誘う女』でニコール・キッドマンの相手役をつとめたホアキン・フェニックス。急死したリバー・フェニックスの弟ということもあり、キワモノ的な扱いを受けているのかと思っていたら、そうでもなかったんですね。面構えが「ジェームス・キャグニーに似てる!」と思ったのは僕だけかな。不器用ながら少しずつ成長して行く主人公の姿を、すっかり自分の中で咀嚼して演技している感じがします。ちょっと先が楽しみな俳優ですね。

 物語の語り手はダグなんですが、この映画に出ている最大のスターはリブ・タイラー。僕は『すべてをあなたに』で遅ればせながら彼女のファンになりましたが、大器の片鱗を感じさせる大スターに一歩手前の若手女優です。彼女の魅力は、演技や芝居が云々という部分じゃない。彼女は画面に登場しただけで、強力な磁石のように観客の視線を集めてしまう、生まれながらのスターなのです。リブ・タイラー扮するパメラ(パム)・アボットの姉エレノア役に、かつての美少女スタージェニファー・コネリーがキャスティングされているのも、映画ファンにはたまりませんね。女優の世界の新旧交代劇を目の当たりにして、それだけでゾクゾクしてしまいます。

 主人公ダグの成長ぶりが、じつに丁寧に描かれていて好感が持てました。普通はどこかで、ありがちなパターンに落としてごまかしてしまうところですが、この映画では主人子が一歩一歩自分の足もとを確かめながら先に進んで行く様子を真正面から撮っている。優等生ではあるが性格的に何かと問題の多い兄ジェーシーの後ろ姿を追いながら、少し背伸びしてみる様子などもよく描けてます。何より感情移入して観ていたのは、ダグとパメラの恋の顛末。リブ・タイラーの魅力もあって、パメラがじつに生き生きとしてます。そんな彼女にどう接していいのかわからないダグ。戸惑いながらも少しずつ二人の心が接近して行く様子が素晴らしい。ソファーの上ではじめてキスする場面も可愛いし、納屋から外を眺めているとき、パメラがダグの手のひらに「I LOVE YOU」と指で書く場面も忘れられません。

 ダグの兄貴のジェーシーは、二枚目の優等生に見えながら、じつは最低の男です。彼は個人的な嫉妬と復讐のために、アボット家の娘たちを次々と口説いてものにする。口説いている内に本人もだんだんその気になってしまうのだからまだまだ小物なんだけれど、その感情の下にはいつもどす黒い欲望が横たわっている。映画を観ていると、それも無理からぬところがあると思えないでもない。ダグにもそれがわかっているから、最後はジェーシーのすべての行為を許そうという気になる。彼は兄の背に追いつき、乗り越えることで成長したのです。


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