スター・ウォーズ
帝国の逆襲《特別篇》

1997/07/14 新宿文化シネマ
ダース・ベイダーとルークの関係が明らかになり、物語は新たな段階へ。
人間ドラマが豊かさが、物語の世界観を大きく広げた。by K. Hattori



 『スター・ウォーズ』シリーズは、1作目と3作目をリアルタイムで劇場鑑賞している僕ですが、この『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』だけはうかうかと観逃して、後からすごく後悔した覚えがあります。今回《特別篇》の3部作で何が一番楽しみだったかというと、まずは1作目を20年ぶりに観ること。次いで、観逃していた『帝国の逆襲』を、映画館のスクリーンの中で観ることでした。ビデオやテレビでは何回か観ているんですけど、やはり映画館の大スクリーンで観る『スター・ウォーズ』は格別ですね。

 ところで、平日の最終回とは言え、劇場がガラガラだったのは気になってます。1作目のオールナイトも客席が3分の入りでしたが、それは「オールナイトだから」という言い訳もできた。鳴り物入りで登場した『スター・ウォーズ』の公開がこんな寂しい状態とは、20世紀フォックスもルーカス・フィルムもあてが外れたんじゃないでしょうか。アメリカじゃ興行記録を塗り替える成績だったというのに、日本でそれは通用しないのかな。『スター・トレック』シリーズなどと違って「予備知識がないとつまらない」というものではないと思うんだけどなぁ。同じ建物の中では『もののけ姫』が満員立ち見で、入場制限までしているというのになぁ。

 『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』は、シリーズ中でもっとも面白い映画じゃないでしょうか。1作目は単独の作品として完成・完結しちゃってますから、長大な『スター・ウォーズ・サーガ』というスケールで考えると小さくまとまりすぎてます。『帝国の逆襲』は「この1本で完結しない」という欠点はあるものの、『スター・ウォーズ』の持っている世界観を、これ1本で一気に数百倍のスケールにまで押し広げた功績は大きい。銀河帝国、反乱軍、ジェダイの騎士などのキーワードが、この作品ではじめて明確な輪郭を持って存在しはじめます。映画に描かれている事件や出来事が、背後にある巨大な物語のほんの一部でしかないのだという実感が、この映画からは得られるはずです。

 こうした世界を描くのも、いちいち台詞で説明したりせずに、エピソードの中の小さな断片からそれを感じさせるのは上手い。例えばこの映画には、ダース・ベイダーの生身の頭部がチラリと見える場面があります。この数秒のカットで、ベイダーという人物の背後にある膨大なエピソードの存在を生々しく感じさせるのです。銀河帝国の力と広大さを、銀河皇帝とランド・カルリシアンという2人の人物の登場で示したりもしている。

 この映画でカーボン・フリーズにされたハン・ソロ船長は、3作目の冒頭であっけなく助け出される。さんざん観客たちの気をもませておいて次につなぐのは、連続活劇と同じ手法。映画館の観客にとって3年は長かったけど、今回の《特別篇》は立て続けに3本公開しますから、本来の連続活劇の雰囲気です。そんなこともあって、本当はもっと映画館に客がほしいぞ。


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