香港大夜総会
タッチ&マギー

1997/06/30 ニュー東宝シネマ1
SMAPの香取慎吾、岸谷五朗、アニタ・ユン共演のコメディ映画。
コメディなのにぜんぜん笑えないのはひどい。by K. Hattori



 家を出るのが遅れて上映時間に遅刻。最初の10分ほどを観逃してしまいました。最終回というわけでもないので、次の回のアタマの方をまた観ればいいかな、と思ったのですが、映画があまりにつまらないのでそんな気にもなれず、そのまま劇場を出てきちゃいました。映画の冒頭に、何か重要な複線とか、観逃してはならないエピソードってあったのかな。仮にあったとしても、僕はそんなもの全然惜しくない。次の回のCMや予告編を観て、さらに映画の冒頭まで戻るなんて、時間の無駄でしかない。そう思わせる出来栄えの映画です。

 それにしても、東宝は『恋は舞い降りた』といい、この『香港大夜総会/タッチ&マギー』といい、本来そこそこのレベルで仕上げなきゃならない映画にロクなものがない。力作『誘拐』の足もとには、こうした駄作凡作が隠れているわけですね。作る側もわざわざ「つまらないものを作ろう」としているわけではないんでしょうけど、この落差には本当にあ然ととします。『恋は〜』と『香港〜』に関しては、「もう少しお金があれば」とかそういう問題じゃないよ。何か映画として大事なものが、根本で欠落しています。素人の僕の目から見ても、「ここでなぜこうなるの」とか「こうしなきゃウソでしょ」と思う場面が無数にあるもんね。

 『香港大夜総会』に関していえば、やはりタイトルにもなっている夜総会のチャチさが致命傷です。ナイトクラブの描写なんて、かつての東宝映画なら朝飯前だったはずなのに、この映画のすすけたセットは何なんでしょう。ナイトクラブの内部がきらびやかであればあるほど、その外側にある街の猥雑さや暴力性が引き立つと思うんだけどな。これって、予算だけの問題じゃないと思う。照明やカメラアングルや、レビューシーンのカット割りなど、総合的な問題ですよ。ナイトクラブで行われているショーが、また古臭いんだよね。奇術と怪力男とアクロバットと懐メロ歌手だぜ。アニタ・ユンという香港のアイドル女優を使いながら、それに「酒とバラの日々」や「夜来香(イエライシャン)」などの懐メロを歌わせて、それで観客にウケると思っているのかね。

 こうしたレビューシーンは、そこだけ切り取っても観客を唸らせるぐらい、豪華絢爛なショーを見せてくれなきゃいけない。人気役者にぼんやりと歌を歌わせて、それをまたぼんやりとカメラで撮っていればそれでよしとする感覚には、まったく我慢ができない。アニタ・ユンはエンドロールでテーマ曲を歌っている場面の、豆粒のような映像の方が生き生きしているんだから気の毒。

 人物の設定はともかくとして、行動にはかなり疑問もあった。岸谷五朗と香取慎吾、アニタ・ユンの恋のすれ違いというありふれたテーマを扱っているのに、なぜありふれた演出すらできないのだ。当たり前のことが当たり前にできないのが、日本映画を観ていてガッカリさせられる原因なんだよね。傑作にはならないにしても、普通にやればこの映画はもっと面白くなるよ。


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