ロスト・ワールド
ジュラシック・パーク

1997/06/19 イマジカ第1試写室
前作にあったまだるっこしさがなくなり、活劇の快感に酔いしれられる。
スピルバーグが全力投球で描く恐竜映画の決定版。by K. Hattori



 スピルバーグが好き勝手にやっている様子が見て取れて、観ているこちらまでワクワクしてくる映画です。前作『ジュラシック・パーク』では、恐竜復活の仕組みやテーマパークとしてのシステムを説明するのにかなりの手間と時間をとられた結果、本当に描きたかった「恐竜本体」が後回しになっている部分が見られた。僕は『ジュラシック・パーク』という映画を映像によるヴァーチャル・テーマパークとして高く評価しているので、こうした「事前の説明」や「物語作りのためのお膳立て」は余計なものでしかない。それは作り手側も同じように感じていたはず。前作でも制作側はある程度割り切っていたようだが、どうしても物語の部分と恐竜の部分の馴染みが悪いところが目立ち、そこが「恐竜はいいけど人間ドラマが駄目」などという、映画の主旨からすれば的外れな批判を招くことにもなっていたと思う。

 今回の映画は前作の続編ということもあり、恐竜復活のプロセスなどを完全に省略。背景説明などはかなり強引なのですが、そこを無理矢理押し通してしまうと、あとはもう活劇に次ぐ活劇。恐竜好きの男の子なら一度は夢に見たであろう場面が次々と登場し、嬉しくて悲鳴を上げそうになります。アメリカ映画には「恐竜物」というジャンルがあるのですが、この映画はその集大成であり頂点となる作品でしょう。

 前作のCG恐竜には驚かされましたが、技術の進歩は目覚しい。今回は実写とCGの継ぎ目がどこにあるのか、まったく判別不能な仕上がり。ティラノサウルスやラプターなど、前作でもお馴染みの恐竜も一段と動きがなめらかになり、芝居に念が入っています。しかし数多くの恐竜の中で一番驚かされたのは、ハトぐらいの大きさの小型恐竜コンプソグナトスの群れでしょう。これが人間を襲うシーンは、CGとマペットと役者の芝居がきれいに合成されて、まるで本当に人間と恐竜が取っ組み合いをしているようにしか見えません。この映画の中でも3本の指に入る見どころのひとつでしょう。

 原作はマイケル・クライトンの同名小説ということになっていますが、内容的には映画のオリジナル部分が大きいそうです。(じつはまだ原作を読んでいない。)クライトンの小説は『ロスト・ワールド』というタイトルを、アーサー・コナン・ドイルの冒険小説「失われた世界」から借用している。コナン・ドイルの小説に触発されて作られた映画が『キングコング』であることは有名ですが、今回の映画版『ロスト・ワールド』は『キングコング』という映画を通じてコナン・ドイルの小説に敬意を払っているようにも見えました。

 大ヒット映画の続編ということもあり、スピルバーグはプロデューサー的に動くだけでも大金を稼ぐことができたはずです。でも映画を観ればすぐわかることですが、この映画にスピルバーグは全力投球している。サスペンス描写などは出世作『ジョーズ』を思わせる部分もあり、全編スピルバーグ色があふれる映画に仕上がってます。


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