レリック

1997/06/02 日劇プラザ
三流のモンスター映画を一流監督のピーター・ハイアムズが演出して
なんとか二流のレベルにまで引き上げた。by K. Hattori



 どうせ安っぽい異生物ホラーサスペンスだろうと思っていたら、監督はピーター・ハイアムズなんですね。知る人ぞ知る一流監督ではないか。全然そんなこと気づかないまま映画を観ていたら、オープニングタイトルで「撮影/ピーター・ハイアムズ」と出てきてびっくり。てっきり他の監督の映画で、出稼ぎカメラマンとして働いているのかと思ってしまった。でも監督もハイアムズだったのね。宣伝では製作総指揮のマーク・ゴードンとゲーリー・レビンソン、製作のゲイル・アン・ハードの方が文字の大きさがでかい。ハイアムズのファンとしては悲しい状態だけど、これもやむを得ないのかな。

 そういう僕も、ハイアムズの代表作『カプリコン1』も『アウトランド』も『2010年』も観ていないで、勝手に「ハイアムズ好き!」と言っている。僕にとってハイアムズはホラーコメディ『カウチポテト・アドベンチャー』や、ヴァン・ダム主演映画『タイムコップ』『サドン・デス』の監督です。彼の作る映画は、どこかに必ず観客を驚かせる大掛かりな撮影場面が用意されている。例えば『サドン・デス』で見せたドーム屋根での格闘や、ホッケーリンクへのヘリコプター墜落など、入念な準備が必要な撮影で、きちんとダイナミックな絵を作ってくれる人です。職人監督ですね。

 ただし、そうした大掛かりな撮影にはやはり予算がかかる。大スターであるヴァン・ダム主演の映画ならある程度の予算も割けますが、今回の映画は予算がなくて苦労しているのがありありとわかります。舞台になるのは大きな博物館だけ。しかもメインは展示室ではなく、研究室や非常階段やトイレや地下通路ですもんね。目玉になるのは、博物館の中を蹂躪しまくる巨大なモンスターぐらい。でもこれは造形のスタン・ウィンストンやCGチームの仕事であって、撮影監督ピーター・ハイアムズの領分じゃないんです。

 今回の撮影で「おおお!」と思わせたのは、パニックを起こした客が我先にと博物館の外に飛び出してくる場面と、館内に残された客が地下道を通って外に脱出する場面のサスペンス。真っ暗なトンネルを、懐中電灯の小さな明かりだけを頼りに歩く人々の心細さが、結構こちらにも伝わってきました。ただ、こうした場面には何の新しさもない。みんなどこかで見たような場面ばかりです。もちろん、新しくないことをきちんとこなせない人も多いですから、これはこれで大事なことですけどね。

 この映画は、シナリオの詰めが甘いのです。モンスターの設定はへんに難しく考えすぎで面白くないし、モンスターと一緒に送られてきた石像も思わせぶりなだけで意味不明。博物館の地下にいたホームレスは、何者だったのかもわからない。何よりも問題なのは、怪物の移動経路がよくわからなくなってしまうこと。僕はてっきり、モンスターが2匹以上いるのかと思いました。博物館内部の地図を電光表示する装置などがあるのだから、これをもっとうまく使った方が迫力が出たと思います。


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