ドタキャン・パパ

1997/04/10 シネマ・カリテ3
デビッド・ペイマーとトム・アーノルドの共演作は期待外れ。
お話やキャラクターにデフォルメが足りない。by K. Hattori



 味のある脇役として数々の映画に出演しているデビッド・ペイマーと、『トゥルーライズ』でシュワルツェネッガーの相棒役として登場し、『9か月』ではジョーン・キューザックの亭主役で子煩悩なパパぶりを発揮していたトム・アーノルド。どちらも僕の大好きな俳優たちです。二人とも時々主役を食ってしまうほど上手いんだよね。僕は彼らが出演している映画なら、まず間違いなく足を運ぼうと思ってます。スター俳優じゃないけど、力のある人たちです。『ドタキャン・パパ』は、そんな二人が主演のコメディ映画。映画ファンならよだれが出そうな組み合わせに、期待も高まろうというもの。この二人が出演していて、面白くないはずがない!

 ところが実際に映画を観ると、これが意に反して面白くないのです。意に反して面白かったりつまらなかったりするギャンブル性も、映画道楽のひとつの醍醐味ですから、「期待していたけどハズレだった」ことを悔やむ必要はない。だが、しかし、なぜに、この二人が主演で映画がつまらなくなってしまうわけ? 僕にはこんな映画を作ってしまったスタッフの資質に、強い疑念を持つわけです。もったいなすぎるぞ。この二人の共演なんて、今の映画界ではもう二度と有り得ないかもしれない、まさに千載一遇の瞬間だったのにね。

 仕事一筋のサラリーマンが病気の妻に代わって子供たちを学校に送る途中、ひょんなことからスーパー強盗の人質になってしまう話です。サラリーマン役がペイマーで、強盗役がアーノルド。「強盗」と言っても、実際は強盗に巻き込まれてもみ合う内、成り行きで金を持って逃げ出したに過ぎない。経営している移動遊園地の資金繰りに苦しんだ挙げ句の、発作的な犯行ってやつですかね。魔が差したんです。本当はいい人なんだけどさ。

 この映画では、この「いい人」ってのがクセモノなんです。タイプの違う二人の人物が呉越同舟一緒に行動している内に、互いの長所や自分の欠点を悟り、成長して行くバディムービーの定石から言えば、ふたりが最初から「いい人」じゃ話にならないでしょう。ペイマーは仕事人間で家族を省みない駄目な父親であり、子供たちも父親には何の期待もしていない。アーノルドは気さくで子供の人気者だけど、経済観念がなく行動に短絡的なところがある人物です。そうしたキャラクターがもっと誇張されていないと、最後にペイマーが仕事を捨てて家族を選ぶところや、アーノルドが堂々とプレゼンテーションを仕切る部分にカタルシスが生まれない。

 車に同乗した子供たちのキャラクターも、ほとんど生かされていない。単なるにぎやかなお荷物でしかないんです。それぞれの個性がもっと立ってくれば、爆笑間違いなしの傑作コメディに仕上がっただろうに……。

 女警官がバンに水中銃を撃ち込んで、水上スキー風に追跡する場面はアイディア賞だと思う。BGMもシーンを盛り上げてました。三人が銃を向け合う場面はタランティーノのパロディかと思ったけど、違うみたいね。


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