2ガールズ

1997/02/09 BOX東中野
落ちこぼれのランディが、学校の人気者イービーに恋をした。
女の子同士の恋を描いた素敵な青春映画。by K. Hattori



 10代の女の子同士の恋を描いた、さわやかなゲイムービー。社会の中で普通に生きるゲイの日常とか、ゲイに対する社会の風当たりの強さなども織り込まれていて、なかなか考えさせられる映画でもあるんだけど、それ以上に主演ふたりの恋の行方が気になって、ドキドキハラハラしっぱなしでした。とにかく面白い。生活のディテールまでじつによく描けているし、登場する各登場人物のキャラクターが立っている。筋の運びもエピソードの配分も申し分なし。小粒な映画だけど、ピリリとした味わいで自己主張する、とてもかわいい映画です。

 周囲の反対にあって、恋する二人の結束がより強まるというのは、恋愛映画の常道じゃないですか。ただし、アメリカはカップル社会だし、最近の親は物分かりがよくなったから、10代の息子や娘に恋人ができても、それだけでは反対なんてしないんだよね。むしろ子供たちに恋人がいないことを心配したりする。ただしこれは、娘が男性と付き合う場合の話。同性愛となれば話はぜんぜん別なのです。

 映画の中で、親が留守の間に主人公たちが初めて一緒の夜を過ごす場面が出てきます。翌朝親が帰ってきて大騒動になるんだけど、親は娘が誰かとベッドにいることでは騒がない。部屋が汚いから片づけろと文句を言うだけ。ところが、ベッドに一緒にいたのが女の子だと知って、はじめてパニックを起こすんです。

 落ちこぼれのランディと、秀才のイービーが主人公。ランディは叔母のレベッカと同居中。家にはレベッカのパートナーや元恋人も同居して、女ばかり4人家族。あまり裕福とは言えない家庭です。一方のイービーは、両親が離婚して母親と二人暮らし。黒人ですが家は裕福です。イービーにはもともとボーイフレンドがいたんですが、しっくりこなくて別れてしまったばかり。本人は自分がゲイだなんて、夢にも思ってない。それがだんだんランディと親しくなって行くところが、じつに自然なんだよね。ランディの家を訪れたイービーが、「叔母さんは私が黒人だから不機嫌なのでは」と気に病むあたりは、同性愛差別と黒人差別のねじれ具合が面白かった。このあと、初めてキスする二人の姿も素敵!

 ランディがイービーの家に泊まりに行くとき、叔母さんに「男友達の家に泊まる」と言い訳するのも面白かった。子供がゲイだと、保護者は同性の友達の家に泊まることのほうを警戒するのね。結局この嘘がばれて、モーテルに立てこもってしまった二人。イービーの母が娘に向かって、「一緒にお医者さんに行きましょう」と言うのもおかしいよね。すぐ隣ではレベッカがランディを説得中で、イービーの母だって彼女がゲイだってことを承知のはずなのに、慌てていると当然のようにこうした台詞が飛び出してくる。面白すぎる〜。

 ホイットマンの詩集の上に手を重ねて、永遠の愛を誓うふたり。モーテルの部屋から出て、みんなの前でキスするラストシーンには、心の中で声援を送ってしまった。


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