インデペンデンス・デイ

1997/01/02 新宿武蔵野館
アメリカ万歳映画と観るのはまだまだ甘い単純すぎる見方だ。
この映画にそんな高尚なメッセージなどない。by K. Hattori



 人々の記憶には残るかもしれないが、映画史には絶対残らないSF超大作。新しさはどこにもない。オリジナリティーらしきものもない。しかし、規模がでかいってことは、それだけで人を威圧することができる。自分より背の高いものに恐れをなし、自分より大きいものにおののく旧脳の原始的な感覚中枢を刺激して、なんだかよくわからないけど「はは〜っ、恐れ入りましてございます」と大名行列に這いつくばって土下座する庶民のような気分にさせられます。これはこれで偉い。

 侵略SF映画の集大成的な物語で、今までよりすごいのは、とにかく全部が全部デカイ!、すべてがハデハデ!という点のみ。あえてオリジナルをあげれば、やっぱり『宇宙戦争』あたりになるのかな。最後に宇宙人がウィルスにやられて死ぬという部分が同じです。もちろん現代風にアレンジはしてますが、ウェルズ原作による古典中の古典を、最新SFX技術でよみがえらせたのが、この映画ってことですね。ウェルズ原作物といえば、つい最近『D.N.A.』という怪作がありました。あれよりは数段面白いし楽しめます。

 宇宙人による地球侵略をテーマにした映画は、得てして低予算の地味な作品になることが多い。宇宙人は人知れずひっそりと地球にやってきて、それに気づいた主人公だけが孤軍奮闘して撃退するという筋立て。これをいまだに繰り返しているのはジョン・カーペンターなんだけど、最近でもデビッド・トゥーヒー監督の『アライバル/侵略者』という映画がありましたね。あれは低予算侵略SF映画の王道でした。

 この映画はそうした低予算映画の逆をやってみせる。圧倒的に技術力が勝っている宇宙人なら、こそこそ行動する必要ないんだよね。いきなりドドドッと押しかけて、力ずくで地球を占領してしまえばいい。で、この映画はそうなってます。有り余るお金がないと、こういうことはできません。有り余るお金があっても、思い切りがないとなかなかこういう映画は作れない。『スターゲイト』の監督ローランド・エメリッヒは、お金の使い所を心得ている。ふんだんに金をかけるところはかけ、ケチるところは徹底してケチっているね。キャストとかさ。

 最初から最後まで、どこかで見た絵、どこかで聞いた台詞のオンパレード。集大成の集大成たるゆえんです。特に感じたのは、日本のアニメからの影響ですね。母船内部の様子は「宇宙戦艦ヤマト」のガミラス星を思わせますし、宇宙人のビーム攻撃も波動砲です。宇宙船がとにかくデカイというのは「超時空要塞マクロス」じゃないかな。巨大な宇宙船が撃墜されるところは「未来少年コナン」のギガント撃墜を思い出しました。

 もちろん『スターウォーズ』風の場面もあるし、ビリー・ワイルダーの映画からの引用もあるし、キングギドラも出てくるぞ。エメリッヒ監督の次回作は『ゴジラ』ですから、キングギドラはその前触れです。そう言えば、キングギドラって宇宙怪獣でしたね。


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