マッドモンク
魔界ドラゴンファイター

1996/12/19 シネマ・カリテ1
徹底的にバカバカしい笑いを追求する香港コメディ映画。
途中1ヶ所、絶対に笑ってしまう場面があります。by K. Hattori



 今年一番笑ったコメディ映画。藤子不二雄万歳! シネマ・カリテのレイトショーで、劇場内にあまり人はいなかったけれど、その少ない客が全員引きつったような笑いを上げてたぞ。あれは不意打ちだった。今思い出しても笑えます。可笑しすぎる。

 天上で仏のために働く主人公が、日ごろの素行の悪さから神様たちの糾弾にあい、天上を追放されそうになる。「俺こそ下界の人たちのことを誰より心に配っているのだ」と大見得を切った主人公は、地上で悔い改めることなく9代も転生を繰り返す娼婦・乞食・人殺しの3人を、羅漢の超能力を使わずに3日で改心させるという賭けをする。賭けに勝てない場合、天上から本当に追放されてしまうのだ。

 地上に人間の若者として転生した主人公が、まず天上界の記憶を取り戻すまでが一苦労。天上から主人公を追ってきた友人のアタフタぶりが笑える。見事自分の使命を悟ってからも、改心させる相手はあっという間に見付かったものの、その業の深さに何度も挫けそうになる。それでも主人公の苦労がみのって、最後は皆が改心してめでたしめでたし。話の筋立てだけをみると、基本的には因果応報輪廻転生のエピソードで、いかにもありがちな、なんとも説教くさい物語。しかしこうした物語の構成の単純さがあるから、次々繰り広げられる爆発的なギャグの応酬にも、物語が破綻しないのです。

 とにかくスピーディーな物語の展開。前半のナンセンスなギャグ釣瓶打ち、中盤のダイナミックな活劇、終盤は特撮を駆使して怪獣映画風の話になる。これ1本で、出来の悪い映画2〜3本分は楽しめる、なんともサービス精神に満ちた作り。冒頭の天上界の場面で、主人公が釣り下げたピアノ線みえみえで登場した時は、「この映画って予算がないのかなぁ」と思いましたが、特撮の予算は後半のために取っておいたんですね。

 とにかく前半から中盤にかけては、ほとんど「スター新春かくし芸大会」のノリ。チャチなセットや、役者たちの扮装と大げさな演技、お約束的な使い古されたギャグを、徹底した悪ふざけと体当たりの芝居で凌いでゆく部分が、僕の中ではなかなか笑いに結びつかなかった。それどころか、あまりにも予想通りの物語展開に、やや白け気味のところがないわけではない。それが「俺はオバケじゃない!」という強烈なぶちかましギャグで無理矢理に笑わせられてしまってからは、観ているこちらもなんだか吹っ切れてしまった。これはその瞬間に突発的に笑って、また次のギャグを待つタイプの映画なんですね。斜に構えてあまり難しく考えてもしょうがない。その場その場で、笑わなきゃ損。

 登場する羅漢達の中では、閻魔大王と月下老人ぐらいしか馴染みがなかったんですが、中国人にはあれが全部わかるんでしょうか。どの神様もみんな人間臭いのは、日本の神話やギリシャ神話などと同じですね。むしろユダヤキリスト教が特殊なのかもしれないけど……。


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