エディー
勝利の天使

1996/11/03 丸の内ピカデリー2
ウーピー・ゴールドバーグがニューヨーク・ニックスのコーチに就任。
バスケットボールのファンにはうれしい映画かな。by K. Hattori



 NBA版『メジャーリーグ』とか、バスケットボール版『天使にラブ・ソングを…』とか、いろんな言い方はあるでしょうが、中身は定番の「素人監督がチームを優勝させてしまいました」映画。主演はウーピー・ゴールドバーグで、NBAの有名選手が総出演の豪華版。しかし映画からそれを除くと、小学生が低迷チームを監督する『リトル・ビッグ・フィールド』という佳作にも劣ってしまう内容なのだなぁ。演出云々じゃなくて、これは作劇の構成面の問題。構成が悪いから演出が照れてしまって、思い切った盛り上げにとりかかれない。

 物語が一本調子の上り坂で、ウーピー演ずる素人監督エディが思い悩む場面はほとんどない。最初にチームに溶け込めないという描写がダラダラ続いて退屈しかけたところで、チームメイトの信認を得た途端に連戦連勝で最下位から優勝争いにからんで来るもんなぁ。極端なんだよね。定番通りの話の筋としては、前任の監督が途中解任された腹いせもあってマスコミを通じて何かとエディーに批判的かつ挑発的な態度を取り続けるとか、チームが低迷を脱しても件の前任監督がコーチするチームにだけは相性が悪くて勝てないとか、優勝争いにからんできた段階でチームが壁にぶち当たってマスコミでエディー・バッシングが起こるとか、そこを乗り越えてチームが最終戦にこぎつけると前監督率いるライバルチームとの対戦になるとか……。もう少し何とかなるでしょ。

 観客はもっとハラハラしたいはず。少なくとも僕はそう。素人監督がダラけたチーム相手に精一杯努力しているのに、世間の風当たりは強い。唯一の後ろ盾であったオーナーも腹の内は……、という展開になって初めて観客はエディーに声援を送れるんじゃないのかな。もうちょっと波風立てろよな。あんまりトントン拍子だと手に汗握れないんだよ。例えば、オーナーがエディーに本心を明かす時期をもう少し早め、エディが動揺してそこからチームが低迷するとかさ。そうした思いを吹っ切ったエディーがネジを巻き直してチームが持ち直すと、オーナーは彼女の本心を自分の都合の言いように解釈するとかさ。観客も彼女の変節に半ば失望しかけていたところで、最終戦のどんでん返しがあるとかさ。素人にだっていろんな盛り上げ方が考えられるぞ。

 バスケットの試合場面は、本物の選手が出演している本物の迫力で、何ヶ所かでホレボレ又はニヤリとするような好プレーが見られる。僕は門外漢だが、NBAのファンにはたまらない映画だろう。欲を言えば、小型のカメラをコートの中に持ち込んで、もっと動きのある絵を撮ってほしかった。コートの中は選手が走りまわっているからかなり危険な撮影になり兼ねないんだけど、離れたところから望遠で選手を追いかけるだけじゃもったいない。もっと疑問だったのは、エディーが1日コーチの権利を手に入れるフリースローの場面で、ゴールが決まった瞬間の彼女の顔が見えないこと。映画の序盤で最大の見せ場なんだから、撮影にはもっと工夫しろよな。

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