GONIN2

1996/07/20 松竹セントラル3
鶴見辰吾の奇怪な進化ぶりに目を奪われて、肝心の物語はすっぽ抜け。
エンドタイトルで片岡礼子の名前を見てびっくり。by K. Hattori


 僕はこの手の映画をさして「作り手が自ら作った雰囲気に呑まれ酔ってしまった映画」と称している。この手の映画に感情移入できる人は、すごく幸せでしょう。作り手と同じ感覚をかなりの範囲で共有できると思います。でも、乗り損ねると馬鹿馬鹿しくて観ていられないのもこの手の映画の特徴。生憎と僕はこの映画に乗れなかった。はっきり言って、これはかなり不幸な状態です。僕はこの映画が最後までシリアスだと思えず、どこかパロディで最後はギャグにしてしまうに違いないと、最後の最後まで思って観ていました。

 観客側のステレオタイプなやくざ像に、べったりと寄り添った設定には笑ってしまいます。資金繰りに行き詰まった鉄工所経営者がやくざから金を借り、返せないでいると取り立てに来たやくざに妻を犯され、妻はそのショックで夫を残して自殺し、元剣道選手でもあった鉄工所のおやじ緒形拳は鉄板で日本刀を作ってやくざに復讐する。ここに登場するやくざも、借金に追われながら夫婦二人のささやかな幸福を守ろうとする鉄工所経営者夫婦も、まるで二昔前の劇画から抜け出して来たような古臭さ、かび臭さ。

 前作『GONIN』でもやくざ像はたいして変わらないけれど、あれは「やくざから金を奪う」というアイディアと、やくざ側が放った北野武と木村一八の殺し屋ホモカップルのキャラクターがずば抜けて面白かったことで成り立っていた部分が大きい。今回はそうした、キーになるアイディアやキャラクターがないのは見劣りがする点。どうせ緒形拳を出して日本刀の立ち回りをさせるなら、もっと壮絶なチャンバラをやらせてほしかった。「今時日本刀の殺し屋なんているか?」と、左とん平組長が首をひねっていたけど、緒形は新国劇出身だし元仕掛人藤枝梅按だから、本来こういう時代がかった役は似合うんだよね。それが今回は、三流のチャンバラもどきをやらせただけでジ・エンド。これじゃもったいなさ過ぎる。

 宝石店強盗から宝石を奪って逃げる女たちのエピソードがあるからこそ、今回『GONIN2』というタイトルにもなっているんだろうけど、そのわりにはこのエピソードは弱い。弱すぎる。まず、主役であるべき彼女たちの個性が、映画の中できちんと描き切れているとはとても思えない。僕は最後まで彼女たちの誰がどういう設定で、どうしてそこに参加しているのかうまく飲み込めなかった。大竹しのぶや喜多島舞は別として、他は結構みんなタイプが似ているでしょ。

 喜多島舞が乱暴な口を利くというのが今回の見所のひとつなのかなぁ。前貼り付きのヌードシーンもあります。いわゆる体当たりの熱演ということでしょうが、残念なことにこの役柄自体があまり魅力的じゃないんだよね。これは他の女たちも全員そうで、誰ひとりとしてこの女たちには共感できませんでした。

 『愛の新世界』や『KAMIKAZE TAXI』の片岡礼子が出演していたようだけど、僕は彼女すら見逃してしまった。


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