ワイルド・サイド

1996/07/05 銀座シネパトス3
アン・ヘッチとジョアン・チェンの濃厚なレズシーンを前にすると、
クリストファー・ウォーケンの影も薄くなる。by K. Hattori


 最近『ニック・オブ・タイム』『デンバーに死す時』でいい味出してたクリストファー・ウォーケンが目当てで観に行った映画。この人は最近、この手の安っぽい映画での悪党ぶりがすっかり板についてしまいましたね。共演は『ラスト・エンペラー』のジョアン・チェン。この二人がタイトルでもトップに出てくるんだけど、実際のところ彼らは脇役に過ぎません。

 本当の主役は銀行員兼高級コールガールのアレックスを演じたアン・ヘッチ。この人、チラシによれば『ミルク・マネー』に出演しているということなんだけど、いったいどこに出ていたのやら。それより『陪審員』でデミ・ムーアの友人を演じてたのが彼女ですよね。アレック・ボールドウィンを相手に美しい裸体を惜しげもなく披露していたのが印象的ですが、この映画『ワイルド・サイド』では役柄のせいもあって、ストリップありSMありの大サービスです。見どころはジョアン・チェンとのレズシーンでしょう。すごくエロチックです。

 諸般の事情で冒頭の数分を見落としてしまったのですが、要するに主人公には借金があって、それを返済するために売春のアルバイトを始めるわけです。昼間はお堅い銀行員、夜は一晩1500ドルの高級コールガールという二重生活です。夜の仕事で知り合ったのが、マフィアの金を洗浄することを生業にしている「ミスター13%」ことクリストファー・ウォーケン。彼はヘッチをFBIの捜査官ではないかと疑うんだけど、じつは彼の運転手が覆面捜査官なんだよね。主人公はこの覆面捜査官にレイプされるは、脅されて捜査協力を強制されるは、ウォーケンには変に気に入られて事業の片棒担がれそうになるは、四面楚歌の状態に追い込まれて行く。

 このあたりは犯罪映画のある種のパタンだと思うんですが、犯罪サスペンスにしてはいやにあっさり手の内を明かしてしまう。ずいぶんと淡白な演出だと思ったら、ジョアン・チェンが登場して話が本格的に動き出して合点がいった。要するにこの映画に登場する男たちは、全員が全員小ずるい悪党で、ヘッチとチェンの女ふたりは、そんな男たちに反逆するのです。後半は、男たちから主人公たち女ふたりがどうやって逃げるかという話になる。マフィアから追われ、警察からも追われ「そうだメキシコに逃げよう」となるあたりは、『テルマ&ルイーズ』みたいでかっこいいです。

 アン・ヘッチとジョアン・チェンのエピソードが中盤から終盤の軸になって行くし、それはそれで十分に面白いんだけど、娯楽映画としてはもうひとつヒネリほしかった。ウォーケンが企むコンピュータ犯罪の概要がいまひとつ伝わってこないのが欠点だし、警察の動きも含めて、主人公たちをもっともっと追いつめてほしかった。ぎりぎりの窮地から抜け出してこそ、観客は主人公たちに拍手喝采できるんじゃないだろうか。


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