狼たちの街

1996/06/30 松竹セントラル1
骨太な男のドラマになるはずが、どうも話が絞り切れなかった。
ジェニファー・コネリーのすごいおっぱいが見もの。by K. Hattori


 間口を大きく構えた割には、奥に行くにしたがって先細りになる映画だった。名の知れたスター級の役者をずらりと揃え、セットや衣装に凝りに凝ったくせに、肝心の物語にはいまひとつパンチがない。主人公ニック・ノルティの行動は焦点が定まらず、観客である僕は彼の行動に感情移入できなかった。メラニー・グリフィスは健闘。ジェニファー・コネリーは立派なおっぱいが見もの。チャズ・パルミンテリはがんばっているけど、演出の目が彼に向いていないから小者に写る。パルミンテリについては、近日公開の『悪魔のような女』に期待しよう。

 原題は「MULHOLLAND FALLS」。ロス市警のハットスクワッドと呼ばれる刑事たちが、街に進出しようとするギャングを拉致して突き落とす崖のことである。この場所は悪人たちがロスに別れを告げる場所であり、愛し合う男と女が離れ離れになる場所でもある。ただし、これは物語の中で強いキーワードにはなっていない。

 もう少し別のタイトルがあってもよかったかな……、と考えたのは配給会社の宣伝部も同じ。そこで日本では『狼たちの街』というタイトルをつけた。狼たちとは誰のことか。ニック・ノルティ、チャズ・パルミンテリ、マイケル・マドセン、クリス・ペンの4人からなるハットスクワッドのことであろう。(相手役のジョン・マルコビッチが狼とは思えないからね。)しかしタイトルに「狼たち」と持ってきたくせに、狼のうち目立つのはノルティとパルミンテリのみ。マドセンとペンは影が薄すぎる。このタイトルもやっぱりミスリードなんだよなぁ。

 物語はドラマ部分にホネがなくて、途中からなんだかグニャグニャになってきてしまう。ノルティ&グリフィス夫婦とコネリーの三角関係に、ハットスクワッド4人組みの男っぽい友情、原爆開発者と軍の秘密、市警とFBIの対立。要はこれだけの話なのに、それぞれが収まるべきところに収まらなくて、てんでバラバラ。冒頭でハットスクワッドの法規を逸脱した正義派ぶりと鉄のように固い結束を見せておいて、途中からそれを放り出して夫婦の話に持って行ってしまったのがまずい。ま、これが今風なのかもしれないけど、夫婦愛と友情と、両方に足をかけた結果どちらも中途半端になってしまった。

 ロス市警内におけるハットスクワッドの立場や、彼らの超法規的な行動がもう少し掘り下げられていると、映画はもう少しわかりやすくなったかもしれない。ハットスクワッド自体は実在したチームだそうだから、ひょっとしたらアメリカでは彼らを主人公にしていろんな映画やテレビが作られているのかなぁ。

 この映画では主人公たちの帽子が、もうひとつの主人公です。ハットスクワッドのメンバーたちが、最後に棺に帽子を置いたはずなのに、なぜかノルティの頭だけには帽子が残っている。……と思ったら別の帽子でした。リボンの形状が少し違うんですねぇ。


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