フィッシャー・キング

1996/06/22 早稲田松竹
僕の生涯で出会った映画ベスト5に必ずランクインする傑作。
理屈っぽくて難解な脚本をテリー・ギリアムがうまくまとめた。by K. Hattori


 最初にこの映画を観た時から「生涯のベスト5」にいきなりランクインし、未だその地位を守っている映画。くり返し観ても魅力が色あせないのは、脚本・役者・演出が三拍子そろっているから。主人公ジャックを演じたジェフ・ブリッジス、ホームレスのパリーを熱演したロビン・ウィリアムズ、ジャックと同棲しているアン役でアカデミー助演女優賞をとったマーセデス・ルール、パリーのガールフレンドになるリディア役のアマンダ・プラマー、強烈な衣装と歌が印象的なオカマの歌手マイケル・ジッター。どれも忘れられない登場人物たちです。

 大好きな映画でLDを買ってしまったくらいだから何度も観ているんだけど、久しぶりに映画館の大画面で観ると感動もひとしお。僕はこの映画を観ていて必ず泣いてしまう場面が幾つかあるんですが、今回は映画館の中でたっぷり泣かされてしまいました。僕のお気に入りは、パリーがリディアを追跡して、駅のコンコースがいきなり大舞踏会に変貌する場面。この場面は映画ならではの魔法のような名場面だけれど、いったいどうしてこんな場面を考え付くのかということにまず感心し、ついでそれを実際に撮ってしまうことに感動し、いつ観ても緻密なカメラワークや演出に酔うことができる。

 ジャックがパリーとリディアのデートをお膳立てするエピソードでは、食事に向かう途中でパリーとリディアが道々話すところから感動してしまう。自分の仕事をゴミみたいだと言うリディアに、ゴミの中にも美しいものはあると言うパリー。その時差し出したのがシャンパンのフタで作った小さな椅子なんだけど、僕はこの場面に感動して同じようなものを作ったことがあります。にぎやかな中華屋の会食場面。その後パリーの歌があって、パリーはリディアをアパートまで送ることに。ジャックに向かってアンが「あなたは今日とてもいいことをしたのよ。私まで鼻が高いわ」と言うところで泣かせておいて、パリーとリディアの別れ際の会話では涙ぼろぼろ。既にこの後の展開を知っているだけに、余計に彼らのささやかな幸せが愛おしく、哀れに感じられるんですね。この映画をいろいろ分析することは簡単だけど、それより僕は映画を観て泣いている方がいい。

 この映画はストレートプレイにも関らず、ミュージカル映画のにおいがプンプンする快作だ。駅が舞踏会になるという突飛な演出もそうだけど、テーマ曲である「ハウ・アバウト・ユー」や、パリーがリディアに捧げる「リディア・ザ・タトゥー・レイディー」、マイケル・ジッターが出版社に乗り込んで歌う「ジプシー」の替え歌、ディズニーのピノキオはアニメによるミュージカルだし、アンのビデオ屋では店内のモニターに古いモノクロのミュージカル映画がかかっていた。


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