踊る大紐育

1996/06/17 銀座文化劇場
ジーン・ケリーの相手役を演じたヴェラ=エレンがすごく可愛い。
バーンスタインの曲はMGM向きではなさそうだ。by K. Hattori


 ジーン・ケリーとシナトラ、ジュールズ・マンシンが24時間の上陸休暇をもらった水兵に扮し、それぞれがヴェラ=エレン、ベティ・ギャレット、アン・ミラーと恋に落ちるミュージカル・コメディ。レナード・バーンスタインのヒット・ミュージカルを映画化した作品だが、彼の音楽は半分が捨てられ、バーンスタインとしては不本意な映画になったようだ。この映画はスタジオ撮影が得意なMGMが、大規模なニューヨーク・ロケをした作品として有名。テーマ曲「New York, New York」を水兵3人が歌う場面は、いかにも「カメラを外に出しました」って感じですが、他は大半が相変わらずのスタジオ撮影ですね。合成を使ってロケ風に見せているところなど、映画館の大画面だと苦労がよくわかります。

 主人公はジーン・ケリー演ずる水兵で、彼が地下鉄で見つけた「今月のミス地下鉄」とどのようなハッピーエンディングを迎えるかが、物語の骨子になっています。シナトラとマンシンは、相手の女性陣があまりにも積極的で一方的に進展するので、恋物語としての面白みは少ない。やっぱり恋は障害があった方が本人たちも燃えるし、周囲も面白がれるものなんでしょうか。

 女たちが男を口説く場面はミュージカル映画の定石通り歌で語られるんだけど、アン・ミラーが博物館で踊る「Prehistoric Man」は映画のために差し替えた曲で、ギャレットがシナトラを口説く「Come Up to My Place」はバーンスタインの曲なんだよね。結果としてどちらが面白いかって言うと、僕は間違いなく差し替えた結果の方が面白い。バーンスタインの怒りをよそに、僕はケリーがバレエ教室でヴェラ=エレンに故郷の町を紹介する「MainStreet」で感動してしまったりしたわけです。エンパイアステイトビルのてっぺんから大通りにかけて6人が歌い踊る「On the Town」も、ロジャー・イーデンスの曲なのね。とほほ。僕はこのナンバーが大好き。逆につまらないのはバーンスタインの「A Day in New York」なんだよな。

 ベティ・ギャレットの風邪ぎみのルームメイトを演じた女優は、「よくぞMGMがこんなブスを探してきた!」というような方なんですが、彼女はアリス・ピアーズといって、この映画で唯一舞台版と同じ役で出演しているキャストなんですね。彼女はただのやかましいブスかと思わせておいて、ジーン・ケリーと別れる場面で思わずホロリとさせたりするんだよね。ケリーに頬にキスされて「これから1年間頬を洗わないわ」なんて、泣かせるよなぁ。

 港で働くおじさんが「I Feel Like I'm Not Out of Bed yet」を歌いながら再登場すると、主人公達に代わって新しい水兵たちがどっと現れるラストシーンもいいね。諸君、恋をしたまえ。


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