ヘブンズ・プリズナー

1996/06/04 松竹セントラル1
アレック・ボールドウィンの個性が生きているアクション映画。
これはぜひともシリーズ化を望みたい。by K. Hattori


ヘブンズ・プリズナー

 アレック・ボールドウィン主演のハードボイルド・アクション映画。人気小説の映画化だと言う点と、今後シリーズ展開が期待できそう、あるいはシリーズになるといいなという点で、デンゼル・ワシントンの『青いドレスの女』に似た映画だ。デイブ・ロビショーを主人公にしたジェイムズ・リー・バーグの小説は現在8作目まで出版されているそうで、映画はシリーズの2作目『天国の囚人』を原作にしている。映画の中ではロビショーが警察を辞めた経緯などについて各所でほのめかした台詞が登場するが、これはシリーズ1作目『ネオン・レイン』を踏まえた脚本なんでしょうね。

 映画は原作を知らなくてもきちんと内容がわかるようにできていて、僕自身原作を読んでいないけれども充分に楽しめました。冒頭でのロビショーの懺悔話だけで、彼の置かれている立場や彼の精神的な危うさがきちんと描きつくされているもんね。ただ、これがそのまま後半の伏線になるわけではなくて、単に主人公の過去を説明するだけになっているのが残念。僕は妻を殺された主人公が、またアルコールに溺れるようになるのかと思いました。

 この映画はサスペンスやミステリーとしては迫力不足だし、暴力描写にも生々しい陰惨さがない。要するにハラハラドキドキする類の映画ではないんだよね。物語の構成としては、主人公ロビショーを巡る二人の女の役割のバランスが悪くて、前半のケリー・リンチはともかくとして、後半のメアリー・スチュアート・マスターソンのエピソードはもう少しふくらませてほしかった。妻の死で復讐以外に人生の意味を見つけられなくなった主人公が、マスターソンの献身的な力で精神的に一回り大きくなってゆく様子が見たかったんだけどなぁ。ただ、それでこの映画がダメかって言うとそんなことはなくて、僕は結構この映画が好きなんですねぇ。これは主人公ロビショーを演じたボールドウィンの魅力によるところが大きい。

 アレック・ボールドウィンは『レッド・オクトーバーを追え』でジャック・ライアンを演じたものの、『パトリオット・ゲーム』以降ハリソン・フォードに主役を奪われるという憂き目を見た人。でも僕に言わせればボールドウィンのライアンなんて、なんの魅力もなかったぞ。あんな役はフォードにくれてやれ。ボールドウィンに優等生のライアンは似合わない。彼には精神的に強さと弱さを合わせ持つ、元アル中刑事のデイブ・ロビショーこそが似合うのだ。

 バーグのロビショーものはシリーズ5作の映画化権をラディ・モーガン・プロダクションが獲得しており、『ヘブンズ・プリズナー』はその第1作目とのこと。今後映画をシリーズ化するのであれば、ぜひともボールドウィンのロビショーで続けてくれ!


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