コピーキャット

1996/04/07 日劇プラザ
アイディアも脚本もいいのに、ジョン・アミエルの演出がぬるすぎる。
もっとおどろおどろしく演出せんかい! by K. Hattori


 公開された時期が時期だけに、なにかと『セブン』と比較されることの多い映画ですが、観る者の神経をギリギリと逆撫でする『セブン』に比べるとこちらの方がオーソドックスな刑事アクションに仕上がっていて、娯楽映画の王道を歩んでいる感じです。

 『羊たちの沈黙』を引き合いに出す意見もあるけれど、考えてみれば世にある刑事アクション映画の半数以上は、「精神異常(または異常正確)の犯罪者とそれに付け狙われるヒロイン、ヒロインを守りつつ犯人を追跡する捜査官」という三角関係の構造に収まるんじゃないでしょうか。さんざんひねりまくった『セブン』も最後はこのバリエーションに落ちつくし……。『羊たちの沈黙』の新しさは、そうしたパターンを打破したところにあったんですね。

 『コピーキャット』の新味はただ一点、執念深い犯人に追われるヒロインと、それを守る捜査官を女同士に設定したところでしょう。もちろん、キャスティングにも工夫がある。犯人に追われるひ弱なヒロインに、海兵隊壊滅後もただひとり戦ってエイリアンを全滅させたアメリカ版和田アキコ=シガニー・ウィーバー。連続殺人犯と対決する女刑事には、少女のように小柄な身体に小さなお顔のアメリカ版小泉今日子=ホリー・ハンターがそれぞれ扮しています。ウィーバーは高名な犯罪心理学者という設定なのですが、公演先のトイレで殺人犯に殺されかけたことが原因で外出恐怖症になり、自分の部屋から一歩も出られない。外部との連絡は電話とパソコン。この時点で終盤になってこの部屋に犯人が侵入することも、電話やパソコンを使って犯人がコンタクトを取ってくることもバレバレ。まぁいいけどね。

 最近は異常犯罪や猟奇殺人が世界的なブームだそうですが、一連のブームに便乗する形で「コピーキャット」なる新手の犯罪者を考え出したのはアイディア賞。どの犯罪が実際のどの事件に対応していて、手口のどこが同じでどこが違うのかはマニアに任せるとしますが、僕が思うに最後のテッド・バンティ模倣のくだりはどこがどうバンティなんだかよくわからなかったし、ジェフリー・ダーマーは単なるホモ殺しじゃなくて「殺してから食う」ところがポイントなんだけどなぁ。このあたりは残念。

 物語を動かして行くのはもっぱらホリー・ハンターなんだけど、この映画ってシガニー・ウィーバーが主人公なんですよね。中盤までの気の抜けた演出で、主役が絞り込めていないのは問題。サスペンス描写も、残念ながら全然恐くない。有名犯罪模倣犯の話を描く前に、有名なサスペンス映画をもっと研究してもらいたかったなぁ。反目していた女二人が和解して行くというストーリーも弱い。ジョン・アミエル監督は『ジャック・サマースビー』の人。なるほど、あれも気の抜けた映画だった。


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